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MLB

MLB史上最大のスキャンダル――100年前に全米を震撼させた「ブラックソックス事件」とは?【ダークサイドMLB】

出野哲也

2020.02.04

 ワールドシリーズでも、ブラックソックス以前に幾度か疑惑はあった。1903年の第1回シリーズでは、レッドソックスの捕手ルー・クリーガーが1万ドルで八百長を持ちかけられて拒否している。その後も12、14、17、18年は怪しいと見られていて、シコットは18年のシリーズに敗れたカブスの選手と列車に同乗した際「シリーズで儲ける方法」について聞かされたと言っていた。

 ストレート勝ちで終わるのと、最終戦までもつれるのとでは当然、入場料その他の収益が違うわけで、ワールドシリーズは形態そのものが談合や不正の土壌となりやすかったのだ。19年のシリーズが9試合制になったのも、少しでも収入を増やそうとの意図があったからである。また1910年代以降に疑惑のケースが急増しているのは、この時代に多くの州で競馬に金を賭けることが禁止され、浮いた金の行き先が野球界へ向けられたのも理由だった。

 このように、球界に不正が蔓延していたのは公然の秘密ではあった。それでもなお、明らかな事実としてワールドシリーズに泥が塗られたことにファンは落胆と憤慨を隠せず、球界首脳も危機感を抱いた。失地回復のため、ランディスは厳しい姿勢を打ち出し、ブラックソックスの8人だけでなく、21~24年にかけてフィル・ダグラス(ジャイアンツ)ら6選手を八百長関連で永久追放とした。
 
 こうして、球界は次第に(少なくとも表向きは)クリーンな方向へ向かっていった。25年以降、ギャンブラーとの直接の接触が理由で追放されたのはピート・ローズとジョージ・スタインブレナーだけである(スタインブレナーの処分はのちに解除されている)。80年代には、ウィリー・メイズとミッキー・マントルの元スーパースター2人が、ラスベガスのカジノで客寄せのために働いていただけで追放処分になった。野球界はそれほどまでに、ギャンブルとの関わりに神経を尖らせてきたのだ。

 ところが、昨年5月にアメリカ連邦最高裁はすべての州においてスポーツ賭博を認める判断を下した。NBAやNHLが早々にブックメーキングの会社と提携したのを横目に、MLBが即座に懸念を表明して慎重な姿勢をとり続けているのは、過去の過ちが繰り返されることを警戒しているからだ。とはいえ、賭博の導入が新たな興味を惹起するのは確実で、MLBにとって人気回復の切り札になる可能性もあり、逆に解禁しないと他のスポーツリーグに遅れを取りかねない。

 この100年間、MLBの健全性を守り続けていたギャンブルとの絶縁状態は維持されるべきなのか。球界は難しい舵取りを迫られている。

文●出野哲也

※『スラッガー』2019年11月号より転載
 

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