殿堂入り選手のケビン・ガーネット（KG）は、1995年から2016年まで21年間NBAでプレーし、キャリア平均17.8点、10.0リバウンド、3.7アシストを記録した。攻守に優れたオールラウンダーとして知られ、ミネソタ・ティンバーウルブズ時代の2003－04シーズンには平均24.2点、13.9リバウンド、5.0アシスト、1.46スティール、2.17ブロックをあげ、キャリア唯一のMVPに輝いている。

　プロ４年目の1998－99シーズンから９年連続平均20点以上をマークしたように、スコアラーとしても一流だったKGだが、2007年に31歳で移籍したボストン・セルティックスではアプローチを変更。プレーオフで勝てなかった過去の経験と、充実した戦力を見て、ディフェンスに全力を注ぐことを決意した。

　８月中旬にミルウォーキー・バックスの公式YouTubeチャンネルで公開された『Hear District Ep.75』でKGは、「ウルブズ時代はチームのオフェンスが自分次第だった」と回想。一方、移籍先のセルティックスのロスターは、オールスター選手のポール・ピアースとレイ・アレンを筆頭に、オフェンス能力の高いベテランが揃っていた。

「ボストンに来た時の心構えは、得点よりもディフェンスのリーダーになることだった。この側面を率いる存在になるんだとね。チームには十分な得点力があった。俺たち３人（自分、ピアース、アレン）だけでなく、エディ・ハウス、ポーズ（レオン・ポウ）、ビッグ・ベイビー（グレン・デイビス）だって点を取れる。得点に関しては話題にもならない選手もいた」
  　スコアリング面の負担が軽くなったことで、「俺の使命は、ディフェンスのA、B、Cすべてを引き受けることだった。リーダーとして守る。必要ならポストで得点もする。でも最優先はディフェンスだった」とKGは語る。

　さらに加入直後には当時のヘッドコーチ、ドック・リバースと面談し、意図を明確に伝えたという。

「オフェンスでは十分やってきた。キャリアで２万5000～２万7000点は稼いだだろう。でも気にしない。ここではチャンピオンリングを２～３個取るために来たんだ。そしてディフェンスの要になる。まだ見たことのない守備レベルを見せる」

　結果として、KGは新天地１年目の2007－08シーズンに平均18.8点、9.2リバウンド、3.4アシスト、1.41スティール、1.25ブロックと躍動。ルーズボールダイブや相手ガードへのプレス、リムプロテクターなど、スタッツに見えない部分でも存在感を発揮した。

　その影響はチーム成績にも現われ、セルティックスは66勝16敗（勝率80.5％）でリーグ１位。スタッツでも平均失点でリーグ２位（90.3）、ディフェンシブ・レーティング（98.1）と被フィールドゴール成功率（41.9％）で１位と堅守を披露。あまりに圧倒的な戦いぶりに、KGは「第３クォーターで『さて、今夜のディナーはどこに行く？』なんて話してたよ」と笑いながら振り返っていた。

　このシーズン、セルティックスは新体制１年目にして22年ぶり17回目のNBA優勝を達成。KGのプレースタイル変更は、チームを頂点へと導く原動力となった。

構成●ダンクシュート編集部

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