専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

「僕よりももっと尊敬されるべき選手が…」新人時代のグラント・ヒルが選手紹介のトリを拒否した理由

北舘洋一郎

2020.07.10

模範的な人柄で知られるヒルは、キャリアを通じて3度のスポーツマンシップ賞(ジョー・デュマ―ス・トロフィー)を獲得した。(C)Getty Images

模範的な人柄で知られるヒルは、キャリアを通じて3度のスポーツマンシップ賞(ジョー・デュマ―ス・トロフィー)を獲得した。(C)Getty Images

 NBAでは試合前の国家斉唱の際、選手とコーチはコートに一列に並び、観客は席を立って、星条旗に向かう。このあたりから会場には張り詰めた空気が流れ始め、試合への期待感を肌で感じるようになる。もちろん現地で観戦するのが一番だが、TV中継からでもその独特の空気を感じられるだろう。NBA観戦の醍醐味であり、これぞアメリカンカルチャーというものを体感できる、唯一無二の感動体験である。

 今ではチアダンサーやプロジェクションマッピングなどのド派手な演出とともに、ホームチームのスターティングラインナップがコールされ、観客と一体感が生まれたところでティップオフへと進行する。しかし1990年代の演出は今ほどの派手さは無かった。どちらかというと会場アナウンスをする名物DJの独特な声質とその語りのイントネーションによって、各チームが違いを出していた。90年代のシカゴ・ブルズは毎試合、会場内で地鳴りが起きるほどの観客の声援でアナウンスはほぼ聞こえず、スターティングラインナップの最後にマイケル・ジョーダンがコールされる時は鳥肌が立ったのを覚えている。
 
 このように、NBA選手にとってホームゲームでスターター紹介の最後にコールされることは、そのチームの大黒柱、ひいてはスーパースターであると名実ともに認められた証と言っていいものだ。

 当時、デトロイト・ピストンズに所属していたグラント・ヒルはこの試合開始までの時間を「無心のまま試合に集中するための儀式」と語っていた。デューク大でNCAA2連覇を果たし、1994年に鳴り物入りでNBA入りしたヒルは、89、90年と頂点に立ち一世を風靡したピストンズを再度強豪へと押し上げるべき若きスーパースターと期待されていた。しかし、球団の思いとは裏腹に、試合前の最も盛り上がる選手紹介の最後に自身をコールすることを拒んだというエピソードがある。

「ベテラン、ルーキーにかかわらず、みんなは看板選手が最後にコールされるのが見たいだけで、ピストンズには僕よりももっと尊敬されるべきスター選手、ジョー・デュマースがいる。僕はジョーが引退するまでは決して彼を超えることはできない。ジョーはNBAでやっていくための術を伝授してくれた大事な人だ」とヒルは言っていた。
 

DAZNなら「プロ野球」「Jリーグ」「CL」「F1」「WTAツアー」が見放題!充実のコンテンツを確認できる1か月無料体験はこちらから

NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号