専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

【プレーオフ激闘録】泥臭くも魅力的なニックスが、ニューヨークを熱く燃やした1994年の夏|前編

大井成義

2020.08.20

ユーイングは同年に平均24.5点、11.2リバウンド、2.75ブロックをあげ、チームを21年ぶりのファイナル進出に導いた。(C)Getty Images

ユーイングは同年に平均24.5点、11.2リバウンド、2.75ブロックをあげ、チームを21年ぶりのファイナル進出に導いた。(C)Getty Images

 近年はドアマットチームと化しているニューヨーク・ニックスだが、1990年代は屈指の強豪としてリーグに君臨していた。そんな彼らが最も優勝に近づいたのが、1993-94シーズン。当時現地に在住していた“ニッキチ”の筆者が、ニューヨークが熱く燃えた、1994年のヒューストン・ロケッツとのファイナルを振り返る。

■21年ぶりの頂上決戦進出に沸き立つ〝ニッキチ〞たち

 スポーツチームのファンのなかには、〝ダイハードファン〞と称する輩が一定数存在する。贔屓チームのことを四六時中考え、自分の血管にはチームカラーと同じ色の血が流れていると信じ、チームに人生のすべてを捧げていると言い切る、ちょっと困った人たち。客観的に見て、あまりお近づきになりたくないタイプだ。

 1990年代の僕が、まさしくそんな感じだった。寝ても覚めてもニックスのことが頭から離れず、テレビ中継やごくたまにマディソンスクエア・ガーデンで、シーズンの全試合を観戦しなければ心の平穏が保てなかった。今思うに、ちょっとした病気だったのだと思う。あれだけ夢中になったスポーツチームはいまだかつてないし、今後も二度とないだろう。

 肉弾戦上等のどこまでも熱いプレーと、その激しさ、泥臭さ、男臭さ、不器用さ、野暮ったさ……。ブルーカラー感満載の1990年代のニックスは、やたらめったら魅力的で、とにかく愛さずにはいられない唯一無二の存在だった。
 
 そのニックスが、この半世紀の間で最も優勝に近づき、最も熱い2週間を過ごしたのが、1993-94シーズンだ。

 3年続けてプレーオフで煮え湯を飲まされ、目の上のたんこぶ的な存在だったマイケル・ジョーダンが、1993年10月に突如引退を表明。

 3連覇を達成し全盛期にあった絶対神が、一身上の都合によりユニフォームを脱いだのである。全米はおろか世界中にとてつもない衝撃が走ったわけだが、それによりブルズのライバルだったニックスをはじめ、リーグの強豪チームにタイトル獲得のチャンスが巡ってくることになる。

 7か月後のプレーオフ、イースタン・カンファレンス第2シードの座を獲得したニックスは、カンファレンス準決勝で新エースのスコッティ・ピッペン擁するブルズ、続く決勝で天敵レジー・ミラー率いるペイサーズと相まみえ、両シリーズとも第7戦までもつれるという激闘を乗り越えて、21年ぶりのNBAファイナル進出を果たす。

 時を同じくして、アイスホッケーのNHLでもニューヨークをフランチャイズに持つレンジャースが半世紀ぶりの優勝をかけ、スタンレーカップ・ファイナルを戦っていた。前日に勝利を収め2勝1敗とリードしていたこともあり、相乗効果も手伝って、ニックスのファイナル進出は、まるで優勝したかのようなお祭り騒ぎに発展する。夜遅くまで、車のクラクションがダウンタウンのストリートに鳴り響いていた。
 

DAZNなら「プロ野球」「Jリーグ」「CL」「F1」「WTAツアー」が見放題!充実のコンテンツを確認できる1か月無料体験はこちらから

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号