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NBA

ティム・ハーダウェイ――伝説のキラー・クロスオーバーで一世を風靡した小さな巨人【NBAレジェンド列伝・前編】

出野哲也

2020.12.02

ハーダウェイが生み出した“キラー・クロスオーバー”は、NBA史に残るシグネチャームーブだった。(C)Getty Images

ハーダウェイが生み出した“キラー・クロスオーバー”は、NBA史に残るシグネチャームーブだった。(C)Getty Images

 バスケットボールは背の高い選手に有利なスポーツだが、身長180cmそこそこの小柄な体格でスーパースターとなった者も少なくない。古くはボブ・クージー、1980年代にはアイザイア・トーマスやジョン・ストックトンが史上有数の名選手として名を残した。90年代後半からはアレン・アイバーソン、現在はクリス・ポールが大活躍している。

 これらの選手はみな、優秀なドリブラーだったという共通点がある。中でも、リーグ最強のドリブラーとして名高かったのが、身長183cmのティム・ハーダウェイだった。「俺がディフェンスを翻弄したようなクロスオーバーを繰り出せるヤツはいない。誰にだって真似できないさ」。ハーダウェイが誇りとしている“キラー・クロスオーバー”は、身体の小さい選手たちに多大な勇気と影響を与えた、歴史に残るシグネチャームーブだった。
 
■わずか183cmの身長でNBAに殴り込んだ男

 ハーダウェイのバスケットボールの才能は、父親譲りのものだった。父もシカゴ界隈では有名なストリートボールの選手だったのだ。赤ん坊の頃から、彼はボールをおもちゃ代わりに育った。12歳の時に両親が離婚した辛さを忘れさせてくれたのも、バスケットボールだった。

 ただ、彼は背の低さというハンデを抱えていた。父は身長が190cm 以上あったのに、150cmに満たない小柄な母親の血を受け継いでしまったのだ。けれども、そのことが身長の高い選手には絶対負けないとの闘争心を掻き立てた。犯罪の多発する環境に育ったことも、バスケットボールで身を立てて豊かな暮らしを手に入れようとの強い意志を支えた。

 キラー・クロスオーバーをマスターしたのは、テキサス大エルパソ校1年生の夏だった。「シラキュース大のパール・ワシントンが、この技を使っていたのをテレビで見たんだ。一体どうやっていたのか分からなかったけど、あのドリブルをモノにできれば、すごい武器になると思った」。弟のドナルドを相手に、ハーダウェイは徹底的に練習を積んだ。通常のクロスオーバー・ドリブルにレッグスルーをミックスした上で、一連の動きを目にも止まらぬ速さで決められるようになった時、ハーダウェイは特別な選手となった。身体の小ささも、この時ばかりは助けとなった。重心が低いため、ボールをより上手くキープすることができたからである。
 

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