専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

「普段とは違う雰囲気だった」通算得点で“ジョーダン超え”を達成した日【コビー・ブライアント名勝負:Part.9】〈DUNKSHOOT〉

大橋哲也

2021.01.28

第2クォーター残り5分24秒、冷静に2本のフリースローを決めてジョーダン超えを達成。試合後にコビーは「ここまで長い旅路だった」と振り返った。(C)Getty Images

第2クォーター残り5分24秒、冷静に2本のフリースローを決めてジョーダン超えを達成。試合後にコビーは「ここまで長い旅路だった」と振り返った。(C)Getty Images

 2020年1月26日、世界中に衝撃を与えたロサンゼルス・レイカーズのレジェンド、コビー・ブライアントの事故死。あれから1年……。コビーの肉体は滅びたが、その勇姿はファンの心に永遠に刻み付けられている。ここでは彼の20年の激闘譜のなかから、後世に語り継ぐべき名勝負を紹介する。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

■2014年12月14日 vsミネソタ・ティンバーウルブズ

 コビーにとってマイケル・ジョーダンは幼少期から憧れの人物であると同時に、いつか追い越すべき存在だった。そしてキャリア19年目の2014-15シーズン、12月14日に行なわれたウルブズ戦で、新たな歴史を刻むことになる。

 ジョーダンの通算得点(3万2292点)まであと8点に迫って迎えたこの試合。第2クォーター残り5分24秒、ザック・ラビーンのファウルを誘ったコビーはいつもと変わらぬ様子でフリースローラインに立つ。そして冷静に2本とも成功。この瞬間、ジョーダンの記録を追い越してリーグ歴代3位に浮上したのだ。

 2本目を沈めた直後、敵地にもかかわらず、ウルブズファンはスタンディングオベーションでコビーの偉業を称えた。ゲームも一時中断となり、ウルブズオーナーのグレン・テイラーからコビーに記念ボールが贈られた。



 チームトップの26得点をマークしたコビーは試合後、「普段とは違う雰囲気だった。俺はいつも敵地で悪役になることに慣れているから、気持ちを整理するのに少し時間が必要だった」とコメント。ジョーダンの記録を超えたことについては、「彼から多くを学ぼうとしている。これまでの自分の成功とキャリアの多くは、彼が占めているんだ。アドバイスをくれたりするし、こうした関係こそが俺にとってすべてと言える」と、ジョーダンの存在が自分を作り上げたと語った。
 
 一方のジョーダンも、AP通信の取材に「このマイルストーンの達成を祝福する。コビーは明らかに偉大な選手で、バスケットボールに強い情熱を抱いている。私は彼のゲームが進化するのを何年も見届けてきたし、次に何を成し遂げるのかも楽しみなんだ」と褒め称えた。なお、ジョーダンはコビーに直接お祝いのテキストメッセージも送ったという。

 レイカーズの先輩であり、コビーが幼少期に「大好きな選手」と公言していたマジック・ジョンソンは、「これまでマイケル・ジョーダンのような選手を見たことがなかったように、今後コビー・ブライアントのような選手を見ることもないだろう」と、記録だけでなく、プレーヤーとしてもコビーがジョーダンと肩を並べる存在となっていると認めた。

 コビーは16年4月に引退するまでの約1年半で、3万3643点まで数字を伸ばしたが、記録はいつか破られるもの。キャリアを通じて多くのレコードを更新してきたコビーも、自身が積み重ねたものを塗り替えられることは把握していた。そして現役引退から4年後の20年1月25日のレイカーズ対シクサーズ戦、レブロン・ジェームズが記録を追い越し、歴代3位に浮上した。コビーは前のシーズンにレイカ―ズに加入したレブロンに対して「これからも前に進み続けろ」とツイッターで祝福。しかし弟分へエールを送った翌日、レジェンドは悲劇に巻き込まれ、帰らぬ人となってしまった。

文●大橋哲也

※ダンクシュート『コビー・ブライアント追悼号』原稿に加筆・修正

【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号