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【名作シューズ列伝】NBA史に残る問題児・アーテストが着用した「CHIEF GLIDER.Ron Artest」は機能美を追求

西塚克之

2021.02.03

コート内外で数多くのトラブルを起こし“問題児”として知られたアーテストだが、守備力を筆頭に選手としての実力は折り紙つきだった。(C)Getty Images

 人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり! 

 ロン・アーテストは、ニューヨークのクイーンズ区出身。都会っ子でスマートかと思いきや、NBA史に残る悪童キャラとして一時代を築いたプレーヤーです。

 彼が起こした悪事で1番有名なのは、2004年11月19日、デトロイト・ピストンズ戦の"パレスの騒乱"。観客と選手を巻き込んだ前代未聞の乱闘騒ぎは、アメリカプロスポーツ史上最も不名誉な事件として知られ、その後アーテストは73試合の出場停止の処分を受けています。

 そのほかにも01年に練習試合でマイケル・ジョーダンの助骨を折ったり、03年にTVカメラを壊し3試合の出場停止処分。"パレスの騒乱"を起こした2004-05シーズンには、CDの制作が忙しいという理由でヘッドコーチに1か月の休養を要求するなど、その愚行や奇行は枚挙に暇がありませんでした。

"問題児"として名高いアーテストですが、選手としての能力は本物でした。とりわけ複数のポジションをカバーできるディフェンス力は高く評価されており、04年には最優秀守備選手賞を獲得。オールディフェンシブチームにも4回選ばれています。また、オフェンス力もあり、デビューから11年連続で平均2桁得点を稼ぎ、時に30得点を叩き出す試合も。その真骨頂を発揮したのは、ロサンゼルス・レイカーズ在籍時の2010年のファイナル第7戦。エースのコビー・ブライアントが絶不調の中、20得点と勝負強さを発揮し、チームの優勝に大きく貢献しました。
 


 そんなアーテストと06年に契約を結んだのがドイツのメーカー「K1X」(ケーワンエックス)。3on3(3×3を当時はこう呼んでいました)やスケーターにも人気があるメーカーなので"さもありなん"ではありますが、当時NBAで唯一の契約者として「CHIEF GLIDER.Ron Artest」はデビューします。



 アッパーは漆黒のパテントレザーと黄金のレザー仕様で、アッパーのアウトサイドには金の刺繍で描かれたディフェンスをするアーテストのシルエットとオートグラフ、ヒールには当時の背番号である93。内側側面には見逃してしまいがちですが、彼のニックネームでもあり、プレースタイルを表した"TRU WARIOR"が黒い刺繍で刻まれています。