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1日1食の苦難を乗り越え、NBA11年目で掴んだ“優勝争いの喜び”。亡き父と戦うビオンボに指揮官も期待「よりダイナミックになる」<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.05.12

マブズとの第5戦で今プレーオフ最多の出場時間を得たビオンボ。指揮官の期待に応え、サンズの勝利に貢献した。(C)Getty Images

 現地時間5月10日に行なわれたフェニックス・サンズ対ダラス・マーベリックスのウエスタン・カンファレンス準決勝第5戦は、サンズが110-80で快勝。カンファレンス決勝進出に王手をかけた。

 サンズのモンティ・ウィリアムズHCはこの試合で、通常とは異なるローテーションを試みたが、これが見事に功を奏した結果となった。

 試合開始4分半でセンターのディアンドレ・エイトンが早くも2ファウルを喫すると、指揮官は交代を指示。ここで送り出したのは、2番手のジャベール・マギーではなく、ビズマック・ビオンボだった。

「機能するという確証があったわけではなかったが、あれがあの時の決断だった」と試合後の会見で采配について明かしたウィリアムズHCは、こう続けた。

「ビズ(ビオンボ)のエネルギッシュさ、細部へのこだわり、それにディフェンス面の威力を倍増できることで、チームがよりダイナミックにプレーできると考えた。それに彼はフィニッシュすることもできるしタフだ。それがジャベールにはできないことだと言っているわけではないがね」
 
 コートに立ったビオンボは、さっそくデビン・ブッカーへのパスでジャンプショットをアシスト。さらにクリス・ポールからのロングパスを受けてダンクを沈めるなど、21分のプレータイムで7得点、6リバウンド、1アシスト、そしてベンチメンバーで最高の得失点差+18と、指揮官の期待に応えてみせた。

 ビオンボは今年1月、エイトンとマギーの両センターが揃って安全衛生プロトコル入りした際に10日間契約で迎えられた。そこで3試合に出場したのち、今季いっぱいまで契約が延長された。

 もっとも、サンズにとってビオンボは"緊急事態の助っ人"ではなく、昨夏フリーエージェントになった時点で、リクルートに動いていた人材だった。しかし8月に最愛の父を亡くしたショックからすぐにバスケットボールに向き合うことができなくなっていた彼は、すべてのオファーを断り、しばらく競技からも距離を置いていた。

「バスケットボールをプレーする準備ができていなかった。自分の感情が空に浮いている感じだった」とビオンボは当時を振り返っている。
 
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