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NBAドラフト1位指名最右翼のウェンバンヤマ。フランス元首相やオスカー俳優が観戦に訪れる社会現象に<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.01.07

今年のNBAドラフトで1位指名が見込まれるウェンバンヤマ。フランスの至宝に世界中から熱視線が注がれている。(C)Getty Images

 今年のNBAドラフトで全体1位指名が有力視されているフランスの至宝、ヴィクター・ウェンバンヤマ。1月4日に19歳の誕生日を迎えたティーンエイジャーは現在、フランスのバスケットボール界にかつてないほどの旋風を巻き起こしている。

 所属するメトロポリタンズ92(通称メッツ)の試合のチケットは、本拠地だけでなく敵地でも毎試合ソールドアウト。"アメリカに行ってしまう前に生観戦する"というのは、フランスのバスケファンのマストとなっていて、試合の2週間前に発売が開始されるチケットは、1~2時間ですべて完売してしまう。

 ホームアリーナのマルセル・セルダンは収容人数4000人という、NBAのアリーナとは比べ物にならないほど小規模な会場ではあるが、それでもソールドアウトになるのは非常に稀。昨シーズンの稼働率は公称86%となっているが、自治体が招待客用などのために確保している分も含まれるため、実際にスタンドの埋まり具合を見た感じでは多い時でも6~7割といったところだ。

 シーズンチケットの購入者数も昨年の80人から212人へと急増したところで、クラブ側は「できるだけ多くのファンにヴィクターを見てもらいたい」というのを理由に販売を中止した。

 また、元首相のリオネル・ジョスパンといった国内の大物だけでなく、オスカー俳優のマイケル・ダグラスがウェンバンヤマ見たさに、このパリ郊外の体育館に2度も来場したりと、注目度はとどまるところを知らない。
 
 先月のパリ・バスケットとの試合には、世界的人気のアメリカ人ラッパー、トラヴィス・スコットが、ガールフレンドのカイリー・ジェンナーとともにコートサイドに陣取るといった、NYのマディソンスクエア・ガーデンかと思うような光景が繰り広げられている。

 こうした現象について当の本人は、恐縮するどころか「まったく気にしていない。僕は何も変わらない。むしろスターが誰も来ていないと、『今日は何かあったのかな?』と思うほどさ(笑)」と、なんとも余裕の発言。

 コートサイドで『beIN SPORTS』のインタビューに答えたマイケル・ダグラスは、「とにかく彼は動きが抜群にいい。NBAで大きなインパクトを与えるのは間違いない。ドラフトでも1位指名を受けるだろうね」と流暢なフランス語でコメントしていたが、そうしたバスケ界以外の著名人からの評価は素直に嬉しいのだそうだ。

 昨年10月にラスベガスで行なわれたGリーグチームとのエキシビションゲームでは、ケビン・デュラントやステフィン・カリー、ヤニス・アデトクンボといった憧れのスター選手たちから賛辞を受けたが、同業者からの言葉となると「この人とはいつか対戦する。この人の上からダンクをすることになるのだろうか…」といった別の感情も湧いてしまうからだという。
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