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NBA

「彼は涙を流していた」ナゲッツ指揮官が2年前にマレーと交わした会話を明かす「もっといい選手になって戻ってくるんだ』と伝えた」<DUNKSHOOT>

秋山裕之

2023.05.22

マローンHC(左)が2021年にマレーが大ケガを負った際のエピソードを明かした。(C)Getty Images

マローンHC(左)が2021年にマレーが大ケガを負った際のエピソードを明かした。(C)Getty Images

 今季のプレーオフでデンバー・ナゲッツは3年ぶりにカンファレンス決勝に駒を進め、レギュラーシーズンでウエスト1位の53勝をあげた実力がフロックでなかったことを示している。

 チームのエースは昨季まで2年連続でMVPに輝いた万能ビッグマンのニコラ・ヨキッチだが、プレーオフに入って目覚ましい活躍を披露しているのがジャマール・マレーだ。

 カナダ出身の26歳のガードは、ロサンゼルス・レイカーズとのカンファレンス決勝第2戦の最終クォーターだけで23得点、計37得点を叩き出すと、第3戦は前半を終えた時点で30得点を荒稼ぎ。さらに相手に逆転を許した第4クォーターで7得点を奪って逆転勝利に導いている。

 マレーは新型コロナウイルスの影響で“バブル”(隔離された施設)開催となった2020年のプレーオフで平均26.5点、4.8リバウンド、6.6アシストと躍動。一躍スターダムを駆け上がったが、翌21年4月に左ヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂する大ケガを負い、昨季はシーズン全休を余儀なくされた。

 ヨキッチに次ぐ看板選手の不在は大きな痛手で、昨プレーオフでチームは1回戦で敗退。だが今季2シーズンぶりにマレーが復帰したことで、ナゲッツは見事な快進撃を見せている。

「ジャマールにとって、今年はものすごく重要な年だ。健康体を取り戻したんだからね。そこでバブルの頃の自分を取り戻すことができるのか、というメンタル面のハードルがあった。では、どうやってそれを乗り越えたのか」

 ナゲッツのマイケル・マローンHC(ヘッドコーチ)はそう切り出し、マレーとのエピソードを明かした。
 
「私が覚えているのは彼とバスにいた時のことだ。彼が(ACLの)ケガをして空港に向かっている時に彼は涙を流していた。そこで私は『いいか。君はこのケガを乗り越えて戻ってくるんだ。ただ復帰するんじゃない。もっといい選手になって戻ってくるんだ』と伝えたよ。あの時、信じるのは本当に難しかっただろうけどね」

「彼が最初に言ったのは『あなたは僕をトレードするんですか?』というものだった。『僕はケガをした欠陥品です。今なら僕をトレードできますか?』とね。そこで私は彼を抱きしめて『そんなことはしない。君は私たちの一員であり、君のことはみんなが大好きだ。私たちは君がより良い選手となって戻ってくるために助けていく』と伝えたんだ。

 ここまでのプレーオフを見ていると、我々が7年前にドラフト指名した男は成長を続けているし、世界で最も大きな舞台で輝いているね」

 マローンHCの下、マレーとヨキッチの2枚看板はプレーオフで存在感を増しており、ナゲッツは初優勝を狙える位置まで肉薄している。

 今季はマイケル・ポーターJr.の成長、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、ブルース・ブラウンの加入も大きかったが、大ケガから完全復活を果たしたマレーこそが、ナゲッツをワンランク上のチームに押し上げたのは間違いないだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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