日本代表

“日本バスケの救世主”ファジーカスが今季限りで引退。アカツキ・ジャパンに「自信」を与え、世界の舞台に導いた功労者<DUNKSHOOT>

永塚和志

2023.09.17

本拠地とどろきアリーナで今季限りでの引退を発表したファジーカス。所属する川崎、そして日本代表で数々の功績を残した。写真:永塚和志

 元日本代表で2019年のFIBAワールドカップにも出場した"ザ・キング"ことニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)が16日、宇都宮ブレックスとのプレシーズンゲーム後、2023-24シーズンをもってユニフォームを脱ぐと表明した。

 2012年の来日からこれまで11シーズン。NBAも経験している207cmのセンターは、ブレイブサンダースを常勝軍団へと押し上げてきた。Bリーグ以前のNBL時代には同チームを2度のリーグ優勝に導き、Bリーグ初年度にはファイナルに出場している。天皇杯は3度制した。

 個人としても、Bリーグの初代MVPとなるなど数々のタイトルを獲得してきた。海外生まれの選手としては間違いなく、日本の男子トップリーグ史上最高の選手の1人に数えられる。

 今夏、日本代表はワールドカップで同国としては史上最多となる3勝(2敗)をあげ、アジアの出場国として1位となりパリオリンピックへの切符を勝ち取った。しかし、5年前にもしファジーカスが帰化を果たして日本代表入りしていなければ、その躍進はあっただろうか。
 
 2018年。日本は2019年ワールドカップへの出場を懸けたアジア地区予選で開幕から4連敗を喫し、翌年に控える東京オリンピック(その後、新型コロナウイルスの影響で1年延期となる)への開催国枠も懸かった本大会出場は風前の灯火となっていた。

 だが、同年6月。ファジーカスと八村塁(現ロサンゼルス・レイカーズ/当時ゴンザガ大)が加わった日本代表は、当時世界10位のオーストラリアを撃破。その後も同地区予選を8連勝で終えて、晴れてワールドカップの切符を掴み取ったのだった。

 自身の代表に及ぼした影響についてファジーカスは、自信のなかったチームに自分たちでもやれるんだという気持ちを注入することができたのではないかと語った。

「あの頃、日本代表の試合があるとなると、(チームメイトの藤井)祐眞なんかと話していても『20点差くらいつけられて負けるのだろうね』などと話していました。だから自分が帰化をして加わった時には、自分たちにだってやれるんだ、戦って勝つんだという風にマインドセットを変えたかったのです」
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