NBA

「俺に似ている…」エースのバトラーがシンパシーを抱く新人、ケンドリック・ナンとは何者か

杉浦大介

2019.12.20

ナンは12月10日のホークス戦で36得点を叩き出し、チームを逆転勝利に導いた。(C)Getty Images

 毎年多くの"サプライズプレーヤー"が生まれるのもNBAの醍醐味だが、今年の第1号はマイアミ・ヒートのルーキー、ケンドリック・ナンだった。まったくのノーマークだったドラフト外入団の24歳は、開幕からの5試合で24、18、25、17、28得点と立て続けに高得点を記録。10月31日のホークス戦で28得点を叩き出したところで、一気に話題が沸騰した。

 デビュー戦から最初の5試合で合計100点超えを達成したルーキーは、2007-08シーズンのケビン・デュラント以来12年ぶり。しかもドラフト外の選手となると、NBA史上初の快挙だった。

 ナンの予想外の活躍もあって、ヒートはここまで20勝8敗、イースタン・カンファレンス3位につけている。今季の中心はジミー・バトラー、ゴラン・ドラギッチ、バム・アデバヨといった実績ある選手たちになるが、ドラフト1巡目13位指名のタイラー・ヒロ、そしてスコアリングガードのナンというルーキー2人の活躍なくして現在の成績はなかっただろう。

「間違いなくハードワークの賜物だ。僕はイエス・キリストを信仰していて、コートではハードワークを自らに課しているんだ。(いきなりの大活躍は)なにか少し不思議な感じがするけど、俺にはプレーの機会が必要だったんだ」
 
 本人が語る通り、サウスポーのナンのキャリアを振り返れば、オフェンス面の才能に恵まれていることは明白だ。デリック・ローズ(現デトロイト・ピストンズ)やジャバリ・パーカー(現アトランタ・ホークス)と同じシメオン・キャリア・アカデミー高時代には、のちに背番号20が永久欠番になるほどの好パフォーマンスを見せた。カレッジでもオークランド大4年時に、トレイ・ヤング(現ホークス)に次ぐ全米2位の平均25.9点をあげた。こういった数字を見れば、2018年のドラフトで指名漏れに終わったのが不思議なくらいではある。

 その背景には、イリノイ大在学中に家庭内暴力事件を起こし、のちに不起訴になったものの、放校処分になった経歴が影響したとされる(その後オークランド大に転校)。それでもプロでのキャリアを諦めなかったナンは、昨季はウォリアーズ傘下のGリーグチームで平均19.3点、1.4スティールと好成績をマーク。今年4月10日にヒートとの複数年契約に合意すると、サマーリーグ、プレシーズンでも好調を維持し、ついにスターターの座を掴んだのだった。