ビジネス色の強いNBAで、先日、こんな心温まるストーリーがあった。
現地3月21日に行なわれたミネソタ・ティンバーウルブズ対ニューオリンズ・ペリカンズ戦でのこと。
この試合、ウルブズのスターティングラインナップには、いつもと違う名前があった。アンソニー・エドワーズ、ジェイデン・マクダニエルズ、ジュリアス・ランドル、ルディ・ゴベアという不動の4人、そして今季加入したオーストラリア人フォワードのジョー・イングルズ。
イングルズはNBAキャリア11年目の37歳のベテランだが、近年はプレータイムが減少。現に今季も18試合で平均6.1分の出場で0.8点、1.2アシストにとどまっており、最後にスターターとして出場したのは、ユタ・ジャズに所属していた2021--22シーズンの1月30日のウルブズ戦だった。
そんな彼がこの試合で先発メンバーとしてコートに立ったのには、理由があった。
妻と3人の子どもが、この試合を見に来ていたからだ。家族は昨年イングルズが所属していたオーランド・マジックの本拠地であるフロリダ州に今も住んでおり、この週は、父に会いにミネソタを訪れていた。
ただ、それだけの理由でクリス・フィンチHC(ヘッドコーチ)も彼を先発で起用する決断には至らなかっただろう。指揮官の心を動かしたのは、8歳になる長男ジェイコブ君の存在だった。
自閉症を持つジェイコブ君は、バスケットボールのアリーナのように、大音響やライトが激しくうごめく場所が苦手で、これまで父の試合を観ることができなかった。それがミネソタに来て初めて、アリーナで試合を最初から最後まで観戦することができたのだが、残念ながらその日の試合で父がコートに立つ機会はなかった。
フィンチHCはそれならば、と、家族がフロリダ州に戻る前の最後の試合で、イングルズをスターターで起用することを決めたのだった。
ウルブズは現在、プレーオフへストレートインできるかどうかの微妙な順位につけ、しかも2連敗中。ここからは1試合も落とせないタイミングだっただけに、イングルズは自分がスターターに選ばれるなどとは到底想像していなかった。
それゆえに、メンバーリストに自分の名前を見つけた時は、フィンチHCに、「本気ですか?」と思わず聞いてしまったそうだ。
この決断について、試合後の会見で指揮官はこう答えた。
「人として必要なことをすべき時がある。プレータイムが別の意味を持つこともあるんだ。誰かが、『今日はジョーがフロアに立てるようにしよう』というアイデアを私に吹き込んだ。それで私も、どうせやるなら、スタイリッシュにやろうじゃないか、と思った。それにみんなが賛成してくれたんだ。
実際、そのことが我々に大きな勢いを与えてくれて、エネルギーの変化をもたらしてくれたように思う。こうした機会は滅多にないが、実現できてとても嬉しいよ」
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この試合、ウルブズのスターティングラインナップには、いつもと違う名前があった。アンソニー・エドワーズ、ジェイデン・マクダニエルズ、ジュリアス・ランドル、ルディ・ゴベアという不動の4人、そして今季加入したオーストラリア人フォワードのジョー・イングルズ。
イングルズはNBAキャリア11年目の37歳のベテランだが、近年はプレータイムが減少。現に今季も18試合で平均6.1分の出場で0.8点、1.2アシストにとどまっており、最後にスターターとして出場したのは、ユタ・ジャズに所属していた2021--22シーズンの1月30日のウルブズ戦だった。
そんな彼がこの試合で先発メンバーとしてコートに立ったのには、理由があった。
妻と3人の子どもが、この試合を見に来ていたからだ。家族は昨年イングルズが所属していたオーランド・マジックの本拠地であるフロリダ州に今も住んでおり、この週は、父に会いにミネソタを訪れていた。
ただ、それだけの理由でクリス・フィンチHC(ヘッドコーチ)も彼を先発で起用する決断には至らなかっただろう。指揮官の心を動かしたのは、8歳になる長男ジェイコブ君の存在だった。
自閉症を持つジェイコブ君は、バスケットボールのアリーナのように、大音響やライトが激しくうごめく場所が苦手で、これまで父の試合を観ることができなかった。それがミネソタに来て初めて、アリーナで試合を最初から最後まで観戦することができたのだが、残念ながらその日の試合で父がコートに立つ機会はなかった。
フィンチHCはそれならば、と、家族がフロリダ州に戻る前の最後の試合で、イングルズをスターターで起用することを決めたのだった。
ウルブズは現在、プレーオフへストレートインできるかどうかの微妙な順位につけ、しかも2連敗中。ここからは1試合も落とせないタイミングだっただけに、イングルズは自分がスターターに選ばれるなどとは到底想像していなかった。
それゆえに、メンバーリストに自分の名前を見つけた時は、フィンチHCに、「本気ですか?」と思わず聞いてしまったそうだ。
この決断について、試合後の会見で指揮官はこう答えた。
「人として必要なことをすべき時がある。プレータイムが別の意味を持つこともあるんだ。誰かが、『今日はジョーがフロアに立てるようにしよう』というアイデアを私に吹き込んだ。それで私も、どうせやるなら、スタイリッシュにやろうじゃないか、と思った。それにみんなが賛成してくれたんだ。
実際、そのことが我々に大きな勢いを与えてくれて、エネルギーの変化をもたらしてくれたように思う。こうした機会は滅多にないが、実現できてとても嬉しいよ」
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