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NBA

キャリアの分岐点――3年目で覚醒したウェンバンヤマ「この夏、僕ほどトレーニングしていた選手はいない」<DUNKSHOOT>

出野哲也

2025.11.17

 もちろんトレーニングも怠りなく、伝説のセンターであるアキーム・オラジュワンの門を叩いてワークアウトに励んだだけでなく、メンタル面を鍛えるため、同じく殿堂入りのビッグマン、ケビン・ガーネットにも教えを乞うた。

「この夏、僕ほどトレーニングしていた選手は他にいないだろう」と自負するくらい、心身ともに充実してシーズンを迎えた成果は間違いなく現れている。

 周囲の選手たちとの息も合っている。昨季の新人王ステフォン・キャッスルとのコンビは、彼の背番号5とウェンバンヤマの背番号1を併せて“エリア51”の異名がついているが、12日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦では2人とも20得点以上のトリプルダブルを記録。これはリーグ史上5組目という快挙だった。

 11月8日に正司令塔のディアロン・フォックスも戦列に復帰したので、彼とのコンビネーションも、実戦でのプレーを積み重ねていくことで熟成されていくはずだ。

 昨季からの明白な相違点は、3ポイントを打つ機会が少なくなっていることだ。全シュートの47%が3ポイントという、身長224cmの巨人らしからぬ数字だったのが、26%と半分近くまで減っている。
 
 通常、ビッグマンのシュートレンジが広ければ広いほど相手は守りにくいので、一定の成功率があるならば、試投数は多い方が望ましい。ただしウェンバンヤマの場合、昨季これだけの本数を打っていたのは、シュートレンジを広げる練習を実戦で積んでいるという側面もあったようだ。

 より確実性を求めた結果、今季はフィールドゴール(FG)成功率が50%を超えていて、1試合あたりのダンクの本数も2.0本→2.8本と増えている。ただ、潜在能力からすればFG成功率はこれでも低すぎる。身長に比較するとまだまだ体格は細いので、敏捷性を失うことなくビルドアップに成功すれば、オラジュワンとニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)をミックスした怪物にすらなり得る。

 今のところはまだ、ウェンバンヤマはシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)、ヨキッチ、ドンチッチらを抑えてMVPを手にするほどではない。だが、この21歳の成長スピードの速さを考えれば、シーズン終盤を迎える頃にはその中に割って入ってくる可能性も、十分あるだろう。

『ジ・アスレティック』のザック・ハーパーはこのように予想している。

「今は相手ディフェンスがあらゆる方法を試し、何が効果的か判断している段階だ。けれども、いずれはどうやっても止められなくなる時期が来るだろう」

文●出野哲也

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