リーグのトップチーム相手にこの活躍は目を見張るものがある。常に心配がつきまとうケガさえせずにプレーできれば、将来のチャンピオンリングホルダーになり得る才能を彼は毎試合のように見せているのだ。

「身長は大きくはないが高さがある。ウイングスパンと跳躍力が規格外で、それがザイオンが高さを支配できる理由だ。もともと備え持った馬力と瞬発力、そして身体の中に何か特別なディーゼル（エンジン）を持っている。それも試合中に自分の力の６割ぐらいでプレーしている感じも、ザイオンの将来への期待感を高めている」

　ペリカンズのヘッドコーチ、アルビン・ジェントリーが言うように、神から授かった身体とその身体能力は他の選手が持ち合わせていないものだ。しかし、これからザイオンが新人王を獲り、オールスター選手に、そしてファイナルを常に狙えるだけのエリートプレーヤーになるために学ばなければならないことはプレーのスキルだけではないともジェントリーＨＣは語る。
  「リーグの頂点に立つ選手になるには、状況を見極める3つの事柄を学ぶ必要がある。これを学ばずに頂へと登りきれなかった選手は多い。まず、勇気のありすぎる選手は必死になりすぎて戦況を見失ってしまう。仁徳を持ちすぎる選手は周りを気にしすぎてメンタルを消耗し継続性を失う。そして、厳格すぎる選手は感情を刺激されると相手の術中にはまってしまい自分をコントロールできなくなる。そういったことをザイオンに誰が話し、彼がその言葉から学び実践することができるか。これからの3～5年が彼の今後を大きく左右するだろう」

　ＮＢＡで立志しその地位を築くには、ただバスケットボールが上手いだけでは成立しない。コビー・ブライアントが遺した「マンバ・メンタリティ」という言葉に代表されるように、選手として以上に人間としての精神論がＮＢＡにおいても何より重要なのだ。次代を担うザイオンの規格外のプレーとともに、彼のバスケットボールに取り組む精神的な成長にも注目したいところだ。

文●北舘洋一郎

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