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NBA

【コビー・ブライアント物語・Part2後編】全米を巻き込む一大スキャンダルによってすべてを失った苦悩の日々

大井成義

2020.03.18

大型補強を敢行した04年は2年ぶりにファイナルに進出。平均22.6点をあげたが、ピストンズの堅守を攻略できず1勝4敗で完敗した。(C)Getty Images

大型補強を敢行した04年は2年ぶりにファイナルに進出。平均22.6点をあげたが、ピストンズの堅守を攻略できず1勝4敗で完敗した。(C)Getty Images

■シャックとジャクソンが退団し、自身が望んだエースの座に就任

 この頃から、コビーの言動や容姿に変化が訪れ始める。それまでコビーはタトゥーを入れたことがなく、どちらかと言えば否定的な見解を示していた。ところが03-04シーズンのトレーニングキャンプに、右肩から肘にかけて大きなタトゥーを入れて姿を現わす。王冠、光輪、天使の羽、そして“ヴァネッサ”の文字。妻への忠誠の証であり、他に400万ドルのパープルダイヤモンドの指輪もプレゼントしたという。

“ブラックマンバ”というニックネームを自称するようになったのもこの頃だ。14年の『ニューヨーカー』誌で、映画『キル・ビル』から採ったとコビー本人は説明している。同作品は03年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督のアクション映画。ユマ・サーマン演じる最強の女殺し屋のコードネームが、ブラックマンバだった。“マンバ”はコブラ科マンバ属の毒蛇の総称で、ブラックマンバはサバンナに生息し、世界で最も危険とされている。蛇の中でも特に動きが速く、トップクラスの殺傷能力を持つ。口の中が黒いことからその名が付けられた。

 コビーはシーズン中であってもコロラドの裁判所に出頭しなければならず、試合当日に裁判所からアリーナに駆けつけたり、試合自体も何度か欠場しなければならなかった。平均得点を前シーズンより6点も落とし、他の数字も軒並みダウン。それでもプレーオフに入ると地力を見せ、順調に勝ち上がっていったが、ファイナルでピストンズに1勝4敗で大敗してしまう。
 
 コビーとシャックの関係は、修復不能なまでに悪化してしまっていた。コビーはシャックと距離の近い記者を避け、シャックはコビーの足首にテーピングを施したトレーナーからの手当てを拒んだ。シーズン中、シャックはチームにトレードを要求している。

 ファイナルの直前に出演した『ESPN』のラジオで、コビーは「チームの再建が必要だが、自分の望んでいない方向に行こうとしている。もし自分の望む方向に行かないのならトレードしてほしい」と語り、物議を醸した。

 シーズン終了後、山が動き始めた。ファイナル終了直後の6月18日、ジャクソンHCの解任が決定。契約の更新にあたり、ジャクソンはそれまでの2倍のサラリーを要求したが受け入れられなかった。また、後に関係者が語ったところによると、ジャクソンはコビーがチームに留まるなら、自分は残りたくないとこぼしていたという。

 そしてついに、最大にして最後の山が動く。シャックのトレード。シャックの要求するサラリーがあまりにも膨大な金額となり、これ以上賄い切れないと判断したフロントは、チームの将来をコビーとともに歩んでいくという決断を下す。3連覇の立役者3人のうち、レイカーズに残ったのはコビーただ1人になってしまった。だが、それこそが彼の望むものだった。
 
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