専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

【NBAデュオ列伝】ジョーダン&ピッペン――“勝てない男”が“無名の優男”を鍛え上げて3連覇を果たすまで|前編

出野哲也

2020.05.15

 ピッペンは意気揚々とトレーニングキャンプに臨んだが、ジョーダンの練習ぶりを見て腰を抜かした。こんなに激しい練習をする人は見たことがない。それに、たかが練習でなぜこんなにも殺気立っているのだろう?彼には訳がわからなかった。

 だが、それがジョーダンのやり方だった。彼は自分自身にも厳しいが、他人に対しても同じくらい厳しかった。技能のない選手を嫌ったが、それ以上に許せないのが熱意や覇気を欠く選手。多くのプレーヤーが練習でジョーダンに痛めつけられ、辱められた。

 そのため、彼は選手として尊敬されていても、人間的には嫌う者もいた。彼のチームメイトになるというのは、ひとつの試練でもあったのだ。

 ピッペンに対してもジョーダンは容赦なかったが、それでも彼は怯まなかった。

「俺は自分から進んでマイケルの練習相手になった。こっぴどくやられても、そこから多くのことが学べると思ったんだ」

 協調的な性格のピッペンは、ジョーダンになかなか認められなくても、憤慨したり不満に思ったりはしなかった。そして練習を重ねるうち、ジョーダンもピッペンの可能性に気づく。こいつがもっと上達したら俺の助けになる――。そう思ったジョーダンは、ピッペンを集中的に鍛えた。
 
 その期待通り、ピッペンは順調に成長を遂げる。特に、フィル・ジャクソンがヘッドコーチに就任し、トライアングル・オフェンスを採用してからは、パスセンスや状況判断の良さ、勘の鋭さといった彼の特長が最大限に生かされた。

 だが、ジョーダンは全面的に信用したわけではなかった。プレーに安定性が欠けていたのだ。

「俺はスコッティにはとりわけ厳しく接した。天性の才能はチーム1で、俺とプレースタイルも似ていた。なのに、練習と同じような力を試合では発揮できないんだ」

 もうひとつ問題があった。ピッペンは精神的にタフではなかったのだ。しかもその欠点は、ブルズが優勝を争うような大事な場面で顔を出すようになる。

 最も彼を悩ませたのは、“バッドボーイズ”と呼ばれたデトロイト・ピストンズのラフプレー。ビル・レインビア、リック・マホーン、デニス・ロッドマンの極悪トリオは、集中的にピッペンを標的として攻撃を加え続けた。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号