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NBA

【名作シューズ列伝】ドレクスラーの「BASKETBALL 911MWXR」。“ドリームチームモデル”として発売も、カラーはまさかの……

西塚克之

2020.06.12

BASKETBALL 911MWXR

BASKETBALL 911MWXR

 ドレクスラーの相棒を務めたのはAVIA製の「BASKETBALL 911MWXR」。当時AVIAは、Reebokと同様に主にフィットネスシューズとして日本へ上陸しました。しかし、Reebokフリースタイルのような大ヒット商品はなかったため、日本での知名度は高くありませんでした。

 そんなブランドにとって名前を売る最大のチャンスが92年の五輪で、他メーカー同様に、AVIAはドリームチームモデルとして「BASKETBALL 911MWXR」を発売します。

 待ちに待ったシューズは、なぜかブレイザーズのチームカラー。ドレクスラーが五輪で着用した、白ベースにブランドロゴ部分が紺に赤ふちで大きくあしらわれたシンプルで美しいUSAカラーではなかったのです。



 今では簡単にスマホで検索ができますが、当時はブラウン管TVの画素数が悪い動画だけでは確認できない時代です。不確かな情報でもファッション誌は、これをドリームチームモデルとして書き立てました。明らかに違うカラーウェイのシューズにショップの店員さんも混乱していた記憶があります。

「BASKETBALL 911MWXR」はアッパーをレザーで上品に覆い、最新テクノロジーとして、アーチ型の衝撃吸収システム「REARFOOT ARC TECHNOLOGY」が採用されています。この機能を搭載したかかと部分はクリアパーツになっているため、視覚的にも楽しめる一足になっています。それゆえに、本人が着用したものとは異なるカラーで販売されたことが残念でなりません。

 当然BOXはAVIAのデフォルト。商品の特徴である「ARC」ロゴがこれでもかと連続で印刷してあります。BOXのカラーは黒字に赤のブランドロゴ、ポイントに白を使用することで、ブレイザース色が強調されているところが悲しみを倍増させます。唯一の慰めポイントはシューズを細かく説明したリーフレットが同梱されていたこと。分解図に付随するテクノロジーが丁寧に描かれており、貴重な資料として興味深く見ることができます。



 総括してしまうと“残念”の一言に尽きるのですが、この“残念”の中には時代の背景や人々の思いなど濃ゆい中身に満ち溢れています。

 84年にブレイザーズが犯した「ドラフトのミス」と92年にAVIAが犯した「オリンピックモデルのミス」。ドレクスラーが巻き込まれた“2大もらい事故”として後世まで語り継がれるのかと思うと少し気の毒です。

文●西塚克之
【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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