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NBA

“盗まれた栄光”“欺かれたアメリカ”。疑惑の判定でソ連に敗れ、屈辱に塗れたミュンヘン五輪の忌まわしき記憶

出野哲也

2020.07.15

■“欺かれた”アメリカ代表。銀メダルの受け取りも拒否

 当時のソ連の主力は、アレクサンドル&セルゲイの2人のベロフ。特にセルゲイは当時のヨーロッパ最高の選手の1人で、迎えた決勝戦でも次々と得点を奪取。試合は終始ソ連ペースで進んでいき、前半を26-21で折り返すと、後半10分には10点まで差を広げた。

 アメリカは得点源のドワイト・ジョーンズ(ヒューストン大/元アトランタ・ホークスほか)が乱闘により退場し、ますます苦しくなっていく。それでもしぶとく食らいつき、1点差の残り3秒、激しいファウルを受けたコリンズがふらつきながらも2本ともフリースローを成功。これで50-49、ついにこの試合初めてのリードを奪った。

 即座にスローインしたソ連だったが、反撃は間に合わないだろうと思われた。ところが「フリースローの間にタイムを要求していた」とソ連が抗議し、選手がコートに出ていたためにゲームは一時中断する。残り1秒から再開され、ソ連がインバウンズパスを投じた直後に試合終了のホーン。アメリカ代表が勝利の喜びに沸きかえるなか、今度は時計が正確にリセットされていなかったと、FIBA会長のレメト・ウィリアム・ジョーンズが言い出した。
 
「何が起こっているのかわからなかった。まるでソ連が上手くいくまで、何度でもチャンスを与えるつもりのようだった」(アメリカ代表のマイク・バンタム/セントジョセフ大/元インディアナ・ペイサーズほか)。

 大混乱の末、またも残り3秒から試合は再開される。ソ連はイワン・エデシュコのフルコートパスを受けたアレクサンドルがレイアップを決め逆転。今度は時間が戻されることなく、アメリカの連勝は63でストップした。

 アメリカはFIBAに提訴したが却下され、表彰式に出席せず銀メダルの受け取りも拒否。「実力で打ち負かされたのなら、誇りを持って銀メダルを受け取っていた。でも俺たちは負けたのではなく欺かれたんだ」とバンタムは言う。受賞者のいないメダルは、今もローザンヌ(スイス)のオリンピック博物館の倉庫に(一説には銀行の金庫に)保管されているという。
 

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