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NBA

カーターの“人間越えダンク”が飛び出したシドニー五輪。しかしこの大会は、4年後に起こる悪夢への序章だった

出野哲也

2020.10.23

 それでもなお、カーターやジェイソン・キッド(当時フェニックス・サンズ)、ケビン・ガーネット(当時ミネソタ・ティンバーウルブズ)らオールスター選手が集まったチームが強くないはずがない。9月上旬にはトレーニングを兼ねた親善試合で日本を56点差で下すなど、順調な調整ぶりでオーストラリアへと乗り込んだ。

■“英雄的な敗者”リトアニアがアメリカを2度も苦しめる

 17日の大会開幕戦は中国と対決。228cmのサイズを誇る弱冠20歳のヤオ・ミン(元ロケッツ)をはじめ、2人の7フッターを相手に序盤は手こずるも、最終的には47点差で圧勝を収める。続くイタリアも32点差で破り、金メダルへの道のりに障害はなさそうに思えた。

 ところが、3試合目のリトアニア戦から様相が変わる。NBAでは当時イリーガル・ディフェンスとされていた、ゾーンとマンツーマンをミックスした守備戦術に適応できず、後半に一時リードを奪われる。9点差で勝ちはしたものの、これはドリームチーム誕生以降の最少得点差だった。
 
 フランスとの5戦目――冒頭で記したカーターのダンクが炸裂した試合――でも、守備の要だったアロンゾ・モーニング(当時マイアミ・ヒート)が出産立ち会いのため一時帰国したことが響き、アメリカ代表の当時の五輪史上ワーストタイ記録となる94失点を喫してしまう。予選ラウンドを5戦5勝で勝ち抜いたとはいえ、不安を残す戦い方だった。

 その懸念は決勝トーナメントの準決勝、リトアニアとの試合で的中する。「アメリカに勝つチャンスがあると全員が信じていた」とアシスタントコーチを務めるドニー・ネルソンが話したように、バスケットボール大国リトアニアの面々は、予選ラウンドでの戦いに手応えを感じていた。

 アメリカは前半で12点差をつけるも、後半開始早々にリトアニアの猛攻に遭い、たったの4分半でリードを失う。残り1分半には79-80と逆転を許した上、モーニングがファウルアウトする絶体絶命のピンチに陥った。
 
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