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NBA

自分の実力に疑問を抱き、謙虚さで成功を収めたマクミランのキャリア【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.12.31

引退後はコーチの道に進み、古巣のソニックスのほかブレイザーズ、2016年から昨季まではペイサーズで指揮を執った。(C)Getty Images

引退後はコーチの道に進み、古巣のソニックスのほかブレイザーズ、2016年から昨季まではペイサーズで指揮を執った。(C)Getty Images

■自分の実力に常に疑問を抱き、その謙虚さで成功を収める

 膝痛の悪化で97-98シーズンは18試合の出場に止まると、マクミランはこのシーズン限りで引退する。

「ケガだらけで、100%の状態でプレーできないことが何よりもフラストレーションだった。昔の自分ではなくなってしまったんだ。もうこんな思いをしなくていいのかと考えると、それだけでも嬉しいよ」。

 通算4893アシストと1544スティールは、その時点でのソニックスの球団記録。『シアトル・タイムズ』紙のスティーブ・ケリー記者は、「彼の遺産は数字ではなくリーダーシップだった。シューズの契約や自己アピールに余念のないような選手ではなく、彼の頭の中には勝利とチームメイトを手助けすること以外に何もなかった」と別れを惜しんだ。

 引退後はソニックスのアシスタントコーチを経て、2000-01シーズンにHCに昇格。「自分がヘッドコーチになるとは思ってもいなかった。アシスタントで10年か20年経験を積んだら、そんな日が来るかもしれないとは思っていたけれどね」と言うマクミランは同時に、「コーチになって初めて、自己中心的でなく、チームを第一に考える自分のような選手がどれほど大切か分かった」と、指導者として選手たちをまとめる難しさを痛感させられた。
 
 05-06シーズンからはポートランド・ブレイザーズ、16-17シーズンからはインディアナ・ペイサーズの指揮を執り、合計16年間HCを務め、プレーオフにも9回進出したが、カンファレンス準決勝より先には一度も進めなかった。昨季限りでペイサーズのHCを解任され、現在はアトランタ・ホークスのアシスタントコーチとして、若手の多いチームを支えている。

「ドラフト指名を受けただけで、これで将来、子どもに自慢できる材料ができたと思ったくらいだった。そんな風に、いつも自分の実力には疑問を抱いていて、必ず仕事が与えられるなんて考えられなかったから、とにかく常に全力を尽くそうとしたんだ」と、マクミランは現役時代を振り返る。こうした謙虚さがあったからこそ、彼は成功を収められたのだろう。

 残した数字だけで判断すれば、平凡な選手にしか思えない。それでも彼のプレーを間近で見てきた仲間たち、そしてシアトルのファンにとっては、マクミランこそが唯一無二のミスター・ソニックなのだ。

文●出野哲也
※『ダンクシュート』2014年3月号掲載原稿に加筆・修正。

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