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NBA

カネと奇言でNBAを騒がせたロシア人オーナー、プロホロフがネッツに残した最後の遺産

杉浦大介

2019.11.07

敏腕GMのマークスの登用はプロホロフのプラスの遺産。近い将来に優勝すれば、前オーナーの再評価もあり得る。(C)Getty Images

敏腕GMのマークスの登用はプロホロフのプラスの遺産。近い将来に優勝すれば、前オーナーの再評価もあり得る。(C)Getty Images

 10年から17年までチームの要職にあったアイリナ・パブロバがそう証言する通り、就任直後のプロホロフは短絡的な大型補強を敢行する。多くのドラフト指名権を犠牲にし、すでにキャリアの終焉期にあったケビン・ガーネット、ポール・ピアースらを獲得した13年のトレードは史上最悪クラスの取引として語り継がれている。その影響で1617シーズンのネッツはリーグ最低勝率に沈み、どん底の低迷を余儀なくされた。

「問題はコミュニケーション不足だった。契約する選手やドラフト指名権に関して、オーナーもチーム首脳と話し合い、そのメリットを知らなければならない。ただ、彼はそこにいないことが多かった」
 
 10年から15年までネッツでアシスタントGMを務めていたボビー・マークスのそんな言葉も見逃せない。徐々にチーム作りに興味をなくした(ように見えた)プロホロフは、アリーナを訪れる回数も減り、チーム関係者や、選手とは満足にコミュニケーションを取らなかった。同時に彼のニューヨークでの存在感は急速に薄れ、近年はチーム売却の噂ばかりが取り沙汰されるようになった。当初のニュース価値の大きさを考えれば、プロホロフのインパクトはジリ貧の感が否めなかったのは事実である。
 
 もっとも、最後に付け加えておくと、プロホロフの最終評価はもうしばらく待つべきなのかもしれない。16年にショーン・マークスをGMとして引き入れて以降、チームは再浮上を開始。昨季は久々にプレーオフに進出し、今オフにはケビン・デュラントとカイリー・アービングを獲得して、リーグ全体を驚かせたことは記憶に新しい。

 これらはある意味、プロホロフの最後の遺産と言えるだろう。近い将来に優勝でもすれば、前オーナーが再評価される可能性もある。だとすれば、彼の時代はまだ完全に終わったわけではないとも考えられる。現時点ではっきり言えるのは、様々な意味で、プロホロフは成否の判断が難しい複雑なレガシーを残したということだけなのだ。

文●杉浦大介

ずぎうら・だいすけ/1999年に渡米後、ニューヨークを拠点にフリーランスのスポーツライターとして活動。NBA、MLB、NFL、ボクシングの4競技を中心に精力的な取材・執筆を行なう。本誌のほか、姉妹誌『スラッガー』やウェブ媒体等に寄稿。ツイッターアカウントは@daisukesugiura


※『ダンクシュート』2019年11月号より転載

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