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NBA

ニックスを破滅へと導く“狂人”ジェームズ・ドーラン。無能オーナーが起こした数々のトラブル伝説【NBA秘話|前編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.05.18

 武勇伝として語り継がれているのは、天敵レジー・ミラーとの熱いバトルだろう。1990年代にニックスとしのぎを削ったライバル、インディアナ・ペイサーズの頭目だったミラーと、プレーオフの試合中に激しい言葉の応酬を繰り広げ、終いには選手を差し置いてスパイクが新聞各紙の一面を飾ったことも何度かあった。

 そんな世界で最も熱く、クレイジーで、ニックスを誰よりも愛する男が、第二の我が家と言ってもいいガーデンで遭遇した一大トラブル。翌日スパイクは『ESPN』のスポーツトークショー『First Take』に緊急ゲストとして呼ばれ、思いの丈をぶちまけている。その時語った内容によると、騒動のあらましはこんな感じだ。

 ガーデンの北側、西33丁目の8番街寄りに従業員用の出入り口がある。正確には“従業員およびメディア、障がいを持つパトロン専用”の出入り口で、スパイクはかれこれ28年以上もの間、そこから出入りしていた。ガーデンの南側、西31丁目の7番街寄りにはVIP専用の出入り口もあるが、スパイクにとって従業員専用出入り口の方が利便的にも精神的にも楽だったのだろう。言わば、一種の慣例になっていた。
 
 2日の夕方、いつものように従業員用の出入り口から入館したスパイクは、チケットをスキャンしてもらい、エレベーターでフロアレベルの5階に行こうとすると、セキュリティからエレベーターの使用は許可できないと言われる。わけのわからないスパイクが強引にエレベーターで5階に上ったところ、何人ものセキュリティが待ち構え、「従業員用の出入り口ではなく、VIP専用もしくは一般客用のゲートから入り直してほしい」と言われたのだそうだ。

 28年間まかり通っていたものが、事前の通告もなしに変更されるのは納得いかない、それに一度スキャンしたチケットでの再入場はできないはずであると、スパイクは断固拒否。それが、冒頭の映像シーンである。

 最終的に、偶然そこに居合わせた、近所に住む仲の良いセキュリティの手引で、とりあえず一旦6階まで行き、そこから自分の席へと降りていった。ハーフタイムには球団オーナーのジェームズ・ドーランがスパイクの席までやってきて、「話したいことがある」と言ってきたそうだが、怒りの収まらないスパイクは「話すことなど何もない」と突っぱねたそうだ。
 
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