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NBA

チェンバレンの“100点ゲーム”の舞台裏。いくつかの条件が重なり、歴史的大偉業が成し遂げられた【NBA秘話|後編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.09.14

 だが何と言っても、この日100点を獲得できた最大の要因はフリースローだった。試投数32、成功数28、成功率87.5%。同じ7フッターで、フリースローの名手として名を馳せたダーク・ノビツキーのキャリア平均が87.9%(歴代16位)。それらの数字だけ見れば、チェンバレンは相当フリースローの上手い選手に思える。

 だが、実際は真逆だ。史上ワーストクラスの下手さなのである。通算成功率は51.1%、一番ひどかったシーズンで42.2%。シャキール・オニールの通算成功率52.7%と比較すれば、その下手さ具合がわかるだろう。そのチェンバレンが、32本中28本を決めたのだから、これはもう奇跡としか言いようがない。そして、その奇跡が起きるには、それなりの理由があった。

 この日チェンバレンは、フリースローに“グラニーショット”を用いた。下手投げである。NBAではリック・バリー(元ウォリアーズほか)が有名で、NBAでの通算成功率は90%と、引退時には歴代最高を誇っていた。
 
 フリースローは、身体や手のひらが大きければ大きいほど、難しくなる傾向にある。チェンバレンもその例にもれず、バスケットボールを始めてからずっと、フリースローを最大の課題にしていた。真偽の程はともかく、大学1年の時にはラインからジャンプして、ダンクでフリースローを決めたこともあったとインタビューで語っている。

 プロに入ってからも、フォームを何度も改造したり、ラインの端や数歩下がった位置から打ったりと、試行錯誤を繰り返した。その中で、一番しっくりきたのが下手投げだった。すべてのフリースローに下手投げを用いることはなかったが、キャリアの初期は下手投げをメインにしていた。100点試合の日は特に調子が良く、下からフリースローを打つと、おもしろいように決まった。もし上から打っていたら、100点は確実にあり得なかった。

 ハーシー・スポーツアリーナの設備の古さも有利に働いた。リングの腰が弱く、ぶつかって跳ねたボールを上手く吸収してくれたのだ。同アリーナでの直近2試合の成功率は71%だった。
 
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