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NBA

チェンバレンの“100点ゲーム”の舞台裏。いくつかの条件が重なり、歴史的大偉業が成し遂げられた【NBA秘話|後編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.09.14

 いくつかの条件が重なったことにより、偉業は成し遂げられた。チェンバレンの突出した能力や、まだ25歳と若く体力がみなぎっていたこと以外に、シーズン最終盤という試合開催の時期、リングとの相性、相手チームの戦力とモチベーション、グラニースローをメインに用いた最後の試合だったこと、それらすべてが追い風となった。そのどれかひとつが欠けても、快挙は成し得なかっただろう。

 チェンバレンの100点試合は、NBA史という観点から見て、最も重要な試合のひとつである。だが、残念ながら映像は記録されていなかった。それどころか、メディアはニューヨークから1人も来ておらず、記者数人とカメラマンが2人いただけ。まだ冬の寒さの3月、冷たい雨が降る金曜の夜に田舎街で開催された消化試合。そこへわざわざ足を運んだわずか4124人の熱心な観客だけが、世紀の得点ショーを堪能でき、歴史の目撃者となれたわけだ。
 
 映像のみならず、ラジオ実況の録音もこの世に存在しないと考えられていたが、1988年、ついに発見された(上書きされていたため第4クォーターのみ)。それまで、記録達成と同時に観客がなだれ込んできた時点で試合は終了し、残り46秒はプレーされなかったというのが定説だったが、録音により最後まで行なわれていたことが判明した。

 ウォリアーズはあと2点上乗せしたものの、チェンバレンはセンターサークル付近から動かず、記録を伸ばそうとしなかった。その理由が、死後に刊行された伝記の中で語られている。

「102より100のほうがいい響きだったから」

 さすが大物チェンバレンである。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2021年2月号掲載原稿に加筆・修正。

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