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NBA

ステフィン・カリー――ウォリアーズの“象徴”となった男が、プロ入り時にニックス行きを望んだ理由【NBA秘話・前編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2022.09.28

75年、リーグ最高の実力者ジャバーがレイカーズに移籍。入団記者会見ではニックスへの“恨み節”を語った。 (C) Getty Images

75年、リーグ最高の実力者ジャバーがレイカーズに移籍。入団記者会見ではニックスへの“恨み節”を語った。 (C) Getty Images

 それから30余年後の2009年、ニックスは再び大きなチャンスを逃すことになる。史上最高のシューターであり、現在のリーグを代表する選手の筆頭格、ステフィン・カリーを獲得し損ねたのだ。それも、ジャバーと同様に選手側がニックス入りを熱望していたにもかかわらず。

 ニックスが意中のチームだったという事実を、カリー本人が初めて明確にしたのは、元NBA選手のマット・バーンズとスティーブン・ジャクソンがホストを務めるポッドキャスト番組『オール・ザ・スモーク』にゲスト出演した2020年1月のことだった。

「俺はニューヨークに行きたかったし、行くものと思っていた。ドラフトのグリーンルームで、『ニューヨークが8位で俺を獲得するだろう』と高をくくっていたら、ラリー・ライリー(当時のウォリアーズGM)から電話がかかってきて、『我々は君を7位で指名するつもりだ』と言われたんだ」。

 そして今年1月、ネットの各種SNSに一般人が書き込んでいる質問に対し、プロアスリート本人がサプライズで答えるという『GQ Sports』の恒例企画『Actually Me』において、カリーは再び語った。インスタグラムに書き込まれていた「ドラフトの前に、行きたいと思っていたチームは?」との問いかけに対し、次のように答えたのである。

「絶対ニックスに行きたいと思ってたよ。ドラフトがニューヨークで行なわれた6月25日は、親父の誕生日だったしね。当時のニックスGMと何度も話し合い、もし俺が残っていたら指名すると言っていた。(中略)でも、すべてのことは起こるべくして起こる。だから俺はウォリアーになったんだ」。
 
■ニックス入りを希望したのは元NBA選手である父の意思

 カリーはデイビッドソン大3年時の2008-09シーズン、NCAAトップの平均28.6点を叩き出し(過去20年間で上から4番目)、全米№1シューターの地位を揺るぎないものにしていた。

 2008年12月にはマディソンスクエア・ガーデンでウエスト・バージニア大と対戦、最初の13本中12本の3ポイントシュートを外すも、その後盛り返して最終的に27得点、10アシスト、4スティール、2ブロックを記録するという離れ業を披露。大学時代、カリーはガーデンでのプレーを楽しみにし、ニューヨーク特有のプレッシャーや、きらびやかな環境下でのプレーを、自分の成長の糧にしていたという。

 だが、それがニックス入りを熱望した最大の理由ではなかった。父デル・カリーのたっての希望だったのである。NBAで16シーズンを過ごし、名シューターとして名を馳せたデルは、引退後もNBAと近い距離に身を置き、リーグ事情に精通していた。
 
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