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NBA

ステフィン・カリー――ウォリアーズの“象徴”となった男が、プロ入り時にニックス行きを望んだ理由【NBA秘話・前編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2022.09.28

 カリーは2009年ドラフトで10位以内の指名が有力視され、一桁台後半というのが大方の予想だった。栄えある1位は6つの全米最優秀選手賞を総なめにしたブレイク・グリフィンで確定、2位から4位までのスポットをハシーム・サビートやリッキー・ルビオを含む3選手が争い、5位と6位の指名権をウルブズ、7位をウォリアーズが所持していた。

 そして、8位指名権を手にしていたのがニックスだった。デルは当時のニックスHC、マイク・ダントーニから、息子をニックスにどうしても欲しいと言われていたそうだ。ニックスはポイントガードの駒が絶対的に不足しており、カリーこそがその穴を補える人材であるとダントーニHCは考えていた。

 2014年12月に『ニューヨーク・タイムズ』から受けた電話インタビューで、デルは「ニックスはポイントガードを必要としていた。そしてステフィンは、ダントーニのような速いアップ&ダウンのオフェンシブなスタイルに完璧にフィットすると思ったんだ。ステフィンも、ガーデンでプレーするというアイデアをとても気に入ってたよ」と語っている。

 ダントーニ体制1年目の08-09シーズン、ニックスはイースタン・カンファレンス1位となる平均105.2得点をマークし、前シーズンのカンファレンス11位から大幅にアップしていた。

 デルと彼の妻ソーニャは、2019年5月に『NBC Sports Northwest』のインタビューへ夫婦揃って出演し、なぜ息子のニックス入りを後押ししたのか、興味深い話を披露している。
 
「ドラフト当日、ドン・ネルソン(ウォリアーズHC)から電話がかかってきて、『ヘイ、お前の息子をドラフト指名するけど、どんな気持ちだ?』と言われたのを覚えている。私は 『(指名)するな』と答えた。『質問されたからには本当のことを言おう。頼むからやめてくれ』と言ってやったよ」。

「息子のプレーは、ベターなチーム、ベターなシナリオ、アップ&ダウン、スピード、ベターなロッカールーム(すべてニックスを指している)、それらにフィットすると思ったからね」。

 デルがそう言うと、傍からソーニャが笑みを浮かべながら口を挟んだ。

「それは父親の答えであり、プロアスリートの目から見た回答よ。私の場合は、『ゴールデンステイトなんて遠すぎる。私のベイビーはどこへ行っちゃうの? ゴールデンステイトがどこにあるかも知らないのに』みたいな感じだった。

 彼(デル)がドラフトで指名された時も、同じような状況だったことを覚えてるわ。大泣きするお義母さんに、『指名されたのよ。おめでたいことなのに、なぜ泣いてるの?』って聞いたら、『ユタなんてどこにあるのよ!』って言ってた(笑)」。

 試しにカリー家の地元シャーロットから、どのフランチャイズまでの飛行距離が一番長いか調べてみた。最も遠いのは、偶然だろうがサンフランシスコの3697㎞、次が僅差でポートランド、サクラメントの順だった。

 ちなみにシャーロットからサンフランシスコまでの飛行距離を日本国内線で換算すると、羽田-福岡2往復プラス170㎞。国際線だと、成田-ハノイ(ベトナム)が3720㎞でほぼ同距離だった。(後編に続く)

文●大井成義
※『ダンクシュート』2022年8月号掲載原稿に加筆・修正。
 
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