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NBA

キングスの司令塔フォックスは『プレイステーション』でバスケを学んだ?“ゲーマー”ならではの能力を恩師が証言<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.04.24

 フォックス自身も、『NBA 2K』でアレン・アイバーソンのクロスオーバーを習得したと語っている。ちなみに、兄と一緒に3歳からプレイしていたというゲームの腕前は抜群で、憧れの選手だったラッセル・ウエストブルックのいたオクラホマシティ・サンダーをチョイスしていたらしい。クラッチタイムに試合を決めきるドラマチックな展開も、幼少時からのゲーム体験で身体に染み込まれているのかもしれない。

 生まれ育った自宅には52インチの特大テレビがあり、その画面でNBAの試合を観ては、プロの試合におけるコートビジョンを学んでいたそうだが、同じ部屋には別の小型テレビやデスクトップパソコンもあった。フォックスはテレビでNBAの試合、一方では大好きなアニメを観ながら、さらにパソコンでゲームをし、膝の上のiPadではYoutubeのビデオが流れ、手元のスマートフォンで友達にテキストを送る……そんな“マルチタスク”を得意としていたそうだ。

「マルチタスクは不可能だと科学者が証明したと言われているけれど、僕はそれには反対だ。僕は不可能だとは思わない」

 彼の頭の中には高性能のプロセッサーが組み込まれているに違いないが、そんなフォックスの素質について面白いコメントをしているのが、ケンタッキー大時代のコーチ、ジョン・カリパリだ。彼は、フォックスは昔から走るのは早かったが、頭のほうは、極めて落ち着いて目の前の状況を解析するタイプだった、と証言している。

「身体は飛び上がっても、頭は足と同じ速さで動くわけではない。だから、速く走りながらも、何が起こっているのかをじっくり頭の中で処理できるようにしなければならない。そうすれば、何が次に起こるのかを把握できるようになる」
 
 つまり、試合で猛スピードで動いている瞬間でも、頭の中では落ち着いて的確に状況を解析し、判断していくことが重要で、「スピードや運動能力とともに、彼の能力で最も光るのは、目の前で展開されるプレーを観察する眼力だった」とカリパリは話している。

 彼は当時、フォックスをして、「この国にこれ以上のポイントガードがいるかどうかわからない」と評している。もちろんこれはカレッジレベルでの話だが、キングスのマイク・ブラウンHCも、フォックスについて驚きなのは、現時点での彼が「まだ本来のポテンシャルの片鱗に触れ始めたにすぎない点」だと語っている。

 25歳にしてキングスの最古参選手であるフォックスには、リーダーシップも備わってきている。これまで何度も自分のトレードの噂は耳にしつつも、この球団の可能性を常に信じていたと、最近のインタビューで語っている。

「このチームにはいい素材があるとずっと確信していた。だから、いつかきっと上手くいくだろうと信じて疑ったことはなかった。僕にとっては、それが“いつ”なのかという問題でしかなかった。だから勝てない時でも辛抱強くいられた。今は僕とドマンタス(サボニス)の周りに素晴らしい選手たちが集まっていて、僕たちはようやくその成果を受け取ることができている」

 ゲームでバスケットボールを学んだというフォックスだが、彼の一番のお気に入りゲームは、『NBA 2K』ではなく、『ドラゴンボールZ』なんだそうだ。相手をじっくり観察して、瞬時に敵の弱点を見極める悟空が彼のヒーローなのだという。プレーオフでも、そんなヒーローっぷりを存分に見せてもらいたい。

文●小川由紀子
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