■最後の対戦後に明かしたKD流のコビーへの感謝の意
2007年のNBAデビュー当時、デュラントは19歳。コビーはプロ12年目の29歳で、2度目の連覇を目前に控え、脂が乗り切っていた時期でもあった。それから9シーズンに渡り、コビーとデュラントはポジションこそ違えど、レギュラーシーズンとプレーオフを合わせて計36試合で相まみえている。
コビーはアキレス腱を断裂した13年以降、年齢の問題に加え大きな故障を繰り返したこともあり、かつての輝きを取り戻すことはなかった。それでも、2人のスターが繰り広げる激しいバトルの密度は格別に濃く、バスケットボールに向き合う姿勢や実力を認め、深くリスペクトしあっていたという。
2015年11月、37歳のコビーはついに引退を表明する。キャリア最終となる2015-16シーズンは“さよならツアー”と化し、メディアやファンが異様な盛り上がりを見せた。そんななか、コビーとデュラントの間で交わされた2つの小さなエピソードがある。どちらもささいな出来事だが、2人の関係性や人柄をそこはかとなく反映しており、心に残る逸話となっている。
コビーのキャリア最終戦が、レイカーズのホームアリーナで開催されたのは2016年4月13日。その2日前に行なわれた最後のアウェーゲームの相手は、デュラントが所属するサンダーだった。2014年にレギュラーシーズンMVPを獲得したデュラントは、レブロンとともに歴代のスーパースターが受け継いできたバトンをコビーから受け取ると目されている選手。その日の試合も、コビー対デュラントのマッチアップ、そして2人のコメントに注目が集まっていた。デュラントはリスペクトするコビーとの最後の対戦を終えた後、どんなはなむけの言葉を送るのだろうか。
試合後のロッカールーム、囲み取材でデュラントの口から発せられた言葉は、メディアの予想を覆すショッキングなものだった。“俺はコビーをデストロイ(粉砕)したかった――”。それは、デュラント流の、コビーに対する最大限の感謝の意だった。
「マイケル・ジョーダンがコートを去る時、コビーは彼に対し手心を加えたりしなかった。俺が考えていたのはそれだけだ。手に入れたすべてのチャンスで、俺はコビーを打ち砕くべくトライしたよ。俺がボールを手にするたびに、彼は『かかってこい、お前に何ができるか見てみようじゃないか』といった感じだった。そのことは、彼がどんなタイプの選手であり、どんなタイプのコンペティターであるかを示している。俺は彼と最後にもう一度真剣勝負をしたかった。それだけだよ」
同じくラストシーズンに、レイカーズ対サンダーの試合がステイプルズ・センターで行なわれた時のエピソードである。コビーとシューズの交換をしていたことを、試合後の囲み取材でリポーターから指摘されたデュラントのコメント。
「誰にも言わないでよ。感傷的なやつだなんて思われたくないから」
デュラントのバッグに、コビーのシグネチャーシューズのコビー11がぶら下がっていたそうだ。それを目にした『ESPN.com』のNBAライター、ロイス・ヤングがツイートしている。
“ケビン・デュラントとコビー・ブライアントがシューズを交換。デュラントにあげたシューズに、コビーはこう書き込んでいた。”
“To KD, be the greatest !”
【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集!
文●大井成義
※『ダンクシュート』2019年10月号より転載
2007年のNBAデビュー当時、デュラントは19歳。コビーはプロ12年目の29歳で、2度目の連覇を目前に控え、脂が乗り切っていた時期でもあった。それから9シーズンに渡り、コビーとデュラントはポジションこそ違えど、レギュラーシーズンとプレーオフを合わせて計36試合で相まみえている。
コビーはアキレス腱を断裂した13年以降、年齢の問題に加え大きな故障を繰り返したこともあり、かつての輝きを取り戻すことはなかった。それでも、2人のスターが繰り広げる激しいバトルの密度は格別に濃く、バスケットボールに向き合う姿勢や実力を認め、深くリスペクトしあっていたという。
2015年11月、37歳のコビーはついに引退を表明する。キャリア最終となる2015-16シーズンは“さよならツアー”と化し、メディアやファンが異様な盛り上がりを見せた。そんななか、コビーとデュラントの間で交わされた2つの小さなエピソードがある。どちらもささいな出来事だが、2人の関係性や人柄をそこはかとなく反映しており、心に残る逸話となっている。
コビーのキャリア最終戦が、レイカーズのホームアリーナで開催されたのは2016年4月13日。その2日前に行なわれた最後のアウェーゲームの相手は、デュラントが所属するサンダーだった。2014年にレギュラーシーズンMVPを獲得したデュラントは、レブロンとともに歴代のスーパースターが受け継いできたバトンをコビーから受け取ると目されている選手。その日の試合も、コビー対デュラントのマッチアップ、そして2人のコメントに注目が集まっていた。デュラントはリスペクトするコビーとの最後の対戦を終えた後、どんなはなむけの言葉を送るのだろうか。
試合後のロッカールーム、囲み取材でデュラントの口から発せられた言葉は、メディアの予想を覆すショッキングなものだった。“俺はコビーをデストロイ(粉砕)したかった――”。それは、デュラント流の、コビーに対する最大限の感謝の意だった。
「マイケル・ジョーダンがコートを去る時、コビーは彼に対し手心を加えたりしなかった。俺が考えていたのはそれだけだ。手に入れたすべてのチャンスで、俺はコビーを打ち砕くべくトライしたよ。俺がボールを手にするたびに、彼は『かかってこい、お前に何ができるか見てみようじゃないか』といった感じだった。そのことは、彼がどんなタイプの選手であり、どんなタイプのコンペティターであるかを示している。俺は彼と最後にもう一度真剣勝負をしたかった。それだけだよ」
同じくラストシーズンに、レイカーズ対サンダーの試合がステイプルズ・センターで行なわれた時のエピソードである。コビーとシューズの交換をしていたことを、試合後の囲み取材でリポーターから指摘されたデュラントのコメント。
「誰にも言わないでよ。感傷的なやつだなんて思われたくないから」
デュラントのバッグに、コビーのシグネチャーシューズのコビー11がぶら下がっていたそうだ。それを目にした『ESPN.com』のNBAライター、ロイス・ヤングがツイートしている。
“ケビン・デュラントとコビー・ブライアントがシューズを交換。デュラントにあげたシューズに、コビーはこう書き込んでいた。”
“To KD, be the greatest !”
【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集!
文●大井成義
※『ダンクシュート』2019年10月号より転載