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NBA

練習要員から大人気選手へと上り詰めたジョン・スタークス。そのきっかけはひとつの“故障”だった【NBA名脇役列伝・前編】

出野哲也

2020.03.03

“機械的”な大黒柱のユーイング(左)とは真逆の闘志あふれるスタイルで、ニューヨーカーのお気に入りに。(C)Getty Images

“機械的”な大黒柱のユーイング(左)とは真逆の闘志あふれるスタイルで、ニューヨーカーのお気に入りに。(C)Getty Images

 そんなスタークスに、ファンはほかの誰よりも大きな声援を送った。『ニューヨーク・タイムズ』紙は「観衆は彼に共感している。彼らの毎日もスタークスと同様で、一生懸命に働いても、良い日もあれば悪い日もあるからだ」と人気の理由を分析した。

 看板選手のユーイングが、比較的おとなしく“機械的”と受け止められていたのに対し、スタークスは何をやらかすかわからないスリルを秘めていた。それも刺激を求めるニューヨーカーには合っていたのかもしれない。
 
 実際、スタークスは感情のコントロールができず、しばしばトラブルの種になった。チームメイトのドック・リバース(現ロサンゼルス・クリッパーズHC)が「前よりマシにはなったけど、まだ一線を踏み越えてしまうことがある」と語っていたように、ちょっとしたきっかけで頭に血が上り、周りが見えなくなってしまうのだ。

 93年のプレーオフ1回戦ではインディアナ・ペイサーズのレジー・ミラーにヘッドバットを食らわせて退場処分。前年のシカゴ・ブルズ戦でも、スコッティ・ピッペンにラリアットを見舞って5000ドルの罰金を科せられた。その度にユーイングやチャールズ・オークリーらに叱責され、スタークスは虚ろな表情で身を縮めるのだが、そんな欠点も含めて、ニューヨーカーはスタークスを愛していたのだ。(後編に続く)

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2013年2月号掲載原稿に加筆・修正
 
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