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NBA

「社会の不公平に断固たる態度を取ることを誇りに思う」引退後も闘い続ける真の戦士ビル・ラッセル【NBA秘話・後編】

大井成義

2020.06.06

 アリーナに集まったセルティックスファンに向かって、ラッセルは語った。
「私はひどく、ひどく恥ずかしい」。
「私がチームとやったことは、私がすべきだと思ったことであり、私が送ってきた人生は、私が送るべきだと思った人生だった」。

 そこにいたすべての観客が立ち上がり、心を込めて送る拍手と喝采は、いつまでも鳴り止むことがなかった。その時ラッセルの目には涙が溢れていた。
 
 2010年、ラッセルはオバマ大統領よりプレジデント・メダル・オブ・フリーダム(大統領自由勲章)を授与される。アメリカの勲章の中で、文民に贈られる最高位の勲章だ。オバマ大統領はスピーチの中で、ラッセルを「すべての人のために、権利と尊厳を求めて立ち上がった男」と褒め称えている。

 その勲章を首から下げているラッセルの写真に、リサーチの過程でたまたま出くわしたのだが、その強烈なインパクトに度肝を抜かれた。ラッセルが床に片手と片ヒザを付き、カメラを鋭い目で凝視しているのである。一瞬コラージュかと思ったが、出典はラッセル本人のツイッター公式アカウント。

 これは2017年9月のツイートで、一部のNFL選手が人種問題への抗議として、試合前の国歌斉唱中に片膝を付くというコリン・キャパニックが始めた行為を継続していることへの後押しと、それを批判するトランプ大統領への抗議の声明だ。ラッセルはつぶやく。

〝ヒザを付いて、社会の不公平に断固たる態度を取ることを誇りに思う〞 

 気骨の男、そして信念の男。ビル・ラッセルは今日もどこかで戦っている。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2020年2月号掲載原稿に加筆・修正。
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