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NBA

シアトル・スーパーソニックス移転の真実。フランチャイズ契約時の虚偽の約束が明らかに【NBA秘話|前編】<DUNKSHOOT>

大井成義

2021.10.04

2006年にベネット(右)はシュルツ(左)からソニックスを買収。2年後に約束を反故にして移転を強行した。(C) Getty Images

2006年にベネット(右)はシュルツ(左)からソニックスを買収。2年後に約束を反故にして移転を強行した。(C) Getty Images

 1990年代に強豪チームの仲間入りを果たすと、1995-96シーズンにはファイナルへ駒を進め、ジョーダンズ・ブルズと激闘を繰り広げた。敗れはしたものの、彼らの時代はすぐそこまで迫っていた。だが、チームの急成長とは裏腹に、この頃から経営サイドは負のスパイラルに突入していく。

 1980年代後半、シアトルを拠点に急速な店舗数拡大で成功を収めていたコーヒーショップチェーン、スターバックスのハワード・シュルツCEO兼社長が、2001年にソニックスを買収。これが混迷の始まりだった。ホームのキー・アリーナは市の所有物で、竣工から40年近く経った建物は老朽化が進み、座席数も多くない。新アリーナ建設への税金投入も議会で否決され、赤字は膨らむ一方だった。その結果、シュルツは2006年にチームをとっとと売却してしまう。

 だが、売った相手が最悪だった。オクラホマシティのビジネスマン、クレイ・ベネット率いる投資家グループである。買収にあたりベネットは、フランチャイズの移転はしない、想定外の事態に陥っても1年間は絶対にシアトルから動かないと約束したが、それらはすべて虚偽だった。はなからシアトルに居続けるつもりはなく、オクラホマシティに移転する気満々だったことが、後にEメール等の文書から発覚する。
 
 また、ベネットとNBAコミッショナーのデイビッド・スターンは懇意の間柄にあり、スターンも最初から移転容認派で、ベネットらの移転計画を陰で強く後押ししたのだった。2005年、ハリケーン・カトリーナの襲来によりニューオリンズが壊滅的な被害に見舞われた際、ホーネッツ(現ペリカンズ/2012-13シーズンまでニューオリンズ・ホーネッツ)のためにオクラホマシティのアリーナを利益度外視で提供したのがベネットだった。その時彼はスターンに貸しを作り、そしてそれは、いつの日かオクラホマシティへNBAチームを誘致するための布石でもあった。

 シアトル残留のための条件は新アリーナの建設だったが、計画は二転三転し、税金の投入も否決され、ベネットらの思惑通り実現には至らなかった。

 2008年4月、NBA30チーム全オーナーによる移転賛否の投票が行なわれたが、反対票を投じたのはブレイザーズのポール・アレンとマーベリックスのマーク・キューバンのみ。独裁者スターンに対し、ファンの代弁者として毅然たる態度を貫いたオーナーは、わずか2人しかいなかった。こうして、2007-08シーズンを最後に、シアトルからNBAのチームが消滅することが確定したのである。(後編に続く)

文●大井成義

※『ダンクシュート』2020年10月号掲載原稿に加筆・修正

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