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NBA

カリー、ハーデン、デローザン――多くのスターを輩出しながら当たり感の乏しい不思議な年【NBAドラフト史|2009年】

大井成義

2019.11.21

1位指名のグリフィンは左ヒザの故障で1年目は全休。翌2010-11シーズンにデビューを果たし新人王を獲得した(C)Getty Images

1位指名のグリフィンは左ヒザの故障で1年目は全休。翌2010-11シーズンにデビューを果たし新人王を獲得した(C)Getty Images

 もう1人の注目株がコネティカット大3年のビッグマン、ハシーム・サビート。ルビオとは対照的に、サビートがバスケットボールを始めたのは15歳の時だった。故郷タンザニアでリクルートされると、すぐさま海を渡りアメリカの高校に入学。強豪コネティカット大で基礎をみっちり身に付け、2年時に才能が開花する。2年連続でビッグイースト・カンファレンスの最優秀守備選手賞に輝き、3年時は平均13.6点、10.8リバウンドを記録し、ビッグイーストの最優秀選手賞も受賞している。

 2009年6月25日、ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンで開催されたNBAドラフトで、クリッパーズが1位で指名したのは、大方の予想通りグリフィンだった。高校時代のHCであり、元バスケットボール選手でもあったハイチ生まれの父トミーは、自分が叶えることのできなかった夢を成し遂げた息子の晴れ姿に目を細めた。

 2位のグリズリーズはサビートを指名。サビートはグリズリーズへの入団に難色を示しており、ワークアウトへの参加要請を拒否したほどだったが、グリズリーズは強行指名に踏み切る。サビートはNBAからドラフト指名された、初めてのタンザニア人選手となった。

 上位2人が決まり、事前の予想では3位にルビオの名前が読み上げられるはずだったが、ここで波乱が起こる。サンダーが選んだ選手は、ルビオではなくアリゾナ州大2年のハーデンだった。この発表に会場は一斉にどよめいた。テレビカメラがルビオを捉えると、引きつった笑顔で3位指名のハーデンに拍手を送る、何とも言えない微妙な表情が映し出された。
 
 テレビ中継で実況を担当していたESPNのスチュアート・スコットも驚きを言葉で伝え、何よりハーデン本人にとってもサプライズな出来事だった。なぜなら、5位のウルブズ入りを確信していたハーデンは、前日の夜にウルブズとワークアウトを行なうという念の入れようだった。

 それでも、「サンダーは若いチーム。ケビン・デュラントやラッセル(ウエストブルック)と一緒にプレーできるのは光栄だ」と、蝶ネクタイでめかしこんだハーデンは歯切れよく語った。なお、2008年に本拠地をシアトルからオクラホマシティに移転したサンダーにとって、ハーデンは記念すべき初めてのドラフト選手となっている。

 指名直後に行なわれたESPNのマーク・ジョーンズとのインタビューで、面白いくだりがあった。

ジョーンズ:「今日のイベント開始前に君のママと話したんだけど、君の顔髭をどうするか家族で投票を行なった結果、今後もキープさせるということになったそうだ」(短いながらも髭がトレードマークのひとつだった)。

ハーデン:「数週間後には剃りたいと思ってる。何か違った感じにして、新しい姿を見せたいんだ。若く見えてしまうかもしれないけどね。まあじっくり考えてみるよ」。

 その数年後、ハーデンの髭がとんでもない大きさまで膨張し、NBAはおろか世界中のアスリートに流行をもたらすことになるとは、この時は誰も想像していなかったに違いない。
 

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