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NBA

カリー、ハーデン、デローザン――多くのスターを輩出しながら当たり感の乏しい不思議な年【NBAドラフト史|2009年】

大井成義

2019.11.21

“スペインの天才PG”ルビオは、所属チームとのバイアウトが成立せずNBAデビューは2年遅れた(C)Getty Images

“スペインの天才PG”ルビオは、所属チームとのバイアウトが成立せずNBAデビューは2年遅れた(C)Getty Images

■ニックス入りを熱望していたカリーの願いは叶わず

 4位のキングスはメンフィス大1年のタイリーク・エバンスを、続いて5位と6位指名権を持っていたウルブズがルビオとシラキュース大2年のジョニー・フリンを指名。そして7位のウォリアーズがデイビッドソン大3年のカリーを指名すると、この日一番のどよめきが会場に巻き起こった。騒然とする観客席をテレビカメラが映し出すと、ニックスのジャージーを着たファンが、文字通り両手で頭を抱えて嘆いている。大きく腕を広げ、何やら叫びながら全身で不満を表明するニックスファンも。

 なぜそんなリアクションが起こったのか。スポーツ専門サイトの『Bleacher Report』にわかりやすい文章が掲載されていたので、ちょっと長くなるが引用してみたい。

〈(8位の)ニックスが狙っていたのは誰だったのか? ステフィン・カリー。マディソンスクエア・ガーデンのファンは誰をチームに必要としていたのか? カリー。カリーが行くべきだったチームは? ニックス。カリーがプレーしたかった場所とチームは? マディソンスクエア・ガーデンとニックス。それらが実現寸前まで迫っていた。ほとんど起こりかけていた。

 カリーのカリスマ、エネルギー、能力、リーダーシップ、感情の爆発、競争心、ハートの強さ、欲望、それらすべてがニューヨークのシーンにぴったりだった。カリーはこのリーグのスターになるだろうし、ニックス以上にふさわしいチームはなかった。
 
 ニックスはトレードで6位指名権を手にすることもできたが、引き金を引かなかった。もしそれを実行に移していれば、ウォリアーズに先んじてカリーを手に入れることができた。そうする代わりに、ニックスは椅子に深く座り、カリーの名前が読み上げられないことをただ祈っていた。

 最後の祈りは決してうまくいかない。ウォリアーズはニックスの直前、7位でカリーを指名し、会場にはブーイングが鳴り響いた。カリーは最初に頭を振り、信じられないといった表情を見せたが、すぐさま笑顔を浮かべてステージへ上っていった。〉

 8位のニックスがアリゾナ大3年のジョーダン・ヒルを指名すると、会場は再びブーイングに包まれる。そして9位のラプターズがデローザンを指名する頃には、観客はただただ悲嘆に暮れていたのか、リアクションはほとんど起こらなかった。ESPNとのインタビューでも、両親の病気の話が半分を占めるなど、盛り上がり感はまったくなく、終始暗い雰囲気が漂っていた。

 思いがけずに3位で指名されたハーデンと、想い焦がれていたチームに入れなかったカリー。さらにルーキーシーズンを振り返ると、鳴り物入りで1位指名されたグリフィンはケガで全休し、2位のサビートは史上稀に見る大ハズレ。ルビオに至っては、所属チームとの契約のこじれや本人の準備ができていないという理由から、NBA入りを果たしたのは2年後のことだった。

 確かに、2009年組からは2018年のオールスター投票で3人が先発に選ばれ、それぞれがチームのフランチャイズプレーヤーとして、またリーグを代表する選手として目覚ましい活躍を見せている。その一方で、いろんな意味でなんとなくスッキリとせず、当たり年なのに当たり感の乏しい、微妙な立ち位置の2009年組。なんとも不思議なドラフトクラスである。

文●大井成義

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※『ダンクシュート』2018年6月号より加筆・修正。
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