■19歳の頃から変わることのない、純粋で真っすぐな眼差し
プロ2年目となる1998年、スポーツ総合誌の仕事でコビーのポートレイトを撮影する機会を得た。練習を終えたコビーが姿を現わし、簡単な挨拶と撮影内容の説明後、すぐさま撮影に取りかかった。チームの広報から与えられた時間が、確か3分とか5分程度と極端に短く、2箇所での撮影を予定しあたふたしていたこともあり、撮影中の指示で覚えているのは、「真っ直ぐレンズを見てください」ぐらい。
今回の悲報を受け、同誌から写真を再掲載したいとの依頼があり、当時のコンタクトシートとプリントを倉庫のダンボールから引っ張り出してきた。22年ぶりのご対面である。
改めてコンタクトシートを見て、その眼差しの真っ直ぐ具合に感心させられた。言葉で説明するのは難しいが、雌雄眼から放たれる純粋な眼差しが、どこまでも真っ直ぐなのである。そしてそれは、19歳のティーンエイジャーの頃と、現在インターネットで見ることのできる最近撮られたであろう40代の写真と、まったく変わらないことに感動すら覚える。
きっと生まれてから亡くなるまで、あらゆることに対して徹頭徹尾真っ直ぐな人間だったのだろうなあと思う。何人にもなびかず、それゆえ衝突することも少なくなかったが、それでも我が道をひたすら真っ直ぐに突き進んできた、そんな気がする。
今、その写真を目の届く場所に貼っている。ショートアフロの若かりし日のコビーをぼんやり眺めながら、僕は小学生のような空想をする。コビーは今、何をやっているのだろうか、と。
バスケフリークのコビーのこと、あの世に着くやいなや、休むことなくプレーを始め、ブイブイ言わせているに違いない。親友のトレイシー・マッグレディが、「コビーの若い頃のプレーにそっくり」とベタ褒めしていた、娘のジアナを相棒に従えて。
ドラゼン・ペトロビッチに〝ピストル〞・ピート・マラビッチ、レジー・ルイスにウィルト・チェンバレン。錚々たるメンバーが揃っており、相手に不足はないはずだ。
向こうでも有名人だろうから、もしかしたら盛大にブーイングを浴びているかもしれない。でも、アンチの連中は、嬉々としてブーイングしながらも、コビーのプレーが見たくてたまらないのだ。コビーの究極の技に酔いしれ、勝利への飽くなき執念に心を震わせたいのだ。まさしく僕がそうであったように。
そんなことはお構いなしに、コビーは空気を読まず初っ端からマンバメンタリティ全開でプレーして、ブーイングしている連中を黙らせるに違いない。
この世にいる僕らは、もうコビーの雄姿を見られないけれど、それはそれで仕方がない。その代わり、記憶の中で、コビーは永遠に生き続ける。不世出のバスケットボールプレーヤー、コビー・ビーン・ブライアント。あなたのことは、生涯忘れない。
文●大井成義
※『コビー・ブライアント追悼号』(ダンクシュート2020年3月号増刊)掲載原稿に加筆・修正。
【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集
プロ2年目となる1998年、スポーツ総合誌の仕事でコビーのポートレイトを撮影する機会を得た。練習を終えたコビーが姿を現わし、簡単な挨拶と撮影内容の説明後、すぐさま撮影に取りかかった。チームの広報から与えられた時間が、確か3分とか5分程度と極端に短く、2箇所での撮影を予定しあたふたしていたこともあり、撮影中の指示で覚えているのは、「真っ直ぐレンズを見てください」ぐらい。
今回の悲報を受け、同誌から写真を再掲載したいとの依頼があり、当時のコンタクトシートとプリントを倉庫のダンボールから引っ張り出してきた。22年ぶりのご対面である。
改めてコンタクトシートを見て、その眼差しの真っ直ぐ具合に感心させられた。言葉で説明するのは難しいが、雌雄眼から放たれる純粋な眼差しが、どこまでも真っ直ぐなのである。そしてそれは、19歳のティーンエイジャーの頃と、現在インターネットで見ることのできる最近撮られたであろう40代の写真と、まったく変わらないことに感動すら覚える。
きっと生まれてから亡くなるまで、あらゆることに対して徹頭徹尾真っ直ぐな人間だったのだろうなあと思う。何人にもなびかず、それゆえ衝突することも少なくなかったが、それでも我が道をひたすら真っ直ぐに突き進んできた、そんな気がする。
今、その写真を目の届く場所に貼っている。ショートアフロの若かりし日のコビーをぼんやり眺めながら、僕は小学生のような空想をする。コビーは今、何をやっているのだろうか、と。
バスケフリークのコビーのこと、あの世に着くやいなや、休むことなくプレーを始め、ブイブイ言わせているに違いない。親友のトレイシー・マッグレディが、「コビーの若い頃のプレーにそっくり」とベタ褒めしていた、娘のジアナを相棒に従えて。
ドラゼン・ペトロビッチに〝ピストル〞・ピート・マラビッチ、レジー・ルイスにウィルト・チェンバレン。錚々たるメンバーが揃っており、相手に不足はないはずだ。
向こうでも有名人だろうから、もしかしたら盛大にブーイングを浴びているかもしれない。でも、アンチの連中は、嬉々としてブーイングしながらも、コビーのプレーが見たくてたまらないのだ。コビーの究極の技に酔いしれ、勝利への飽くなき執念に心を震わせたいのだ。まさしく僕がそうであったように。
そんなことはお構いなしに、コビーは空気を読まず初っ端からマンバメンタリティ全開でプレーして、ブーイングしている連中を黙らせるに違いない。
この世にいる僕らは、もうコビーの雄姿を見られないけれど、それはそれで仕方がない。その代わり、記憶の中で、コビーは永遠に生き続ける。不世出のバスケットボールプレーヤー、コビー・ビーン・ブライアント。あなたのことは、生涯忘れない。
文●大井成義
※『コビー・ブライアント追悼号』(ダンクシュート2020年3月号増刊)掲載原稿に加筆・修正。
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