先週と今週にまたがる国際Aマッチウィークに行なわれた北中米ワールドカップ欧州予選、新監督ジェンナーロ・ガットゥーゾの下で再出発を図ったアッズーリ(イタリア代表)は、9月5日のエストニア戦(ホーム)に5-0、8日のイスラエル戦(アウェー)に5-4で勝利を収めて勝点を9に伸ばし、同勝点のイスラエルを得失点差で抜いてグループIの2位に浮上した。
11月の予選最終節に組まれているノルウェーとの直接対決にグループ1位(=W杯出場権)の可能性を残すためには、勝点6の確保は絶対条件だった。それをクリアした点では、ポジティブなスタートには違いない。しかし試合そのものは、これまで見られなかった新たな可能性を感じさせる一方で、簡単には解決できそうにない大きな課題も垣間見える、手放しでは喜べない複雑な内容だった。
具体的に言えば、新たな可能性というのは、マテオ・レテギ、モイゼ・ケーンという2トップの呼吸が合った連携によるチャンスメイクと決定力の大幅な向上であり、大きな課題は、あまりにも不安定な最終ラインの守備である。歴史的に堅固な守備を自らの拠り所としてきたイタリアからすれば、その守備に小さくない不安を抱えるというのは皮肉な話ではある。
ベルガモで行なわれたエストニア戦のスタメンは以下の通り。
GK:ドンナルンマ
DF:ディ・ロレンツォ、バストーニ、カラフィオーリ、ディマルコ
MF:ポリターノ、バレッラ、トナーリ、ザッカーニ
FW:レテギ、ケーン
近年のイタリア代表は、EURO2020で優勝したロベルト・マンチーニ監督時代は4-3-3、ルチャーノ・スパレッティ前監督も当初はそれを受け継ぎ、昨秋に3バックにシステムを切り替えてからも前線は1トップ+トップ下の3-5-1-1と、ほぼ一貫して1トップを基本に据えてきた。これは、前線のストライカーに人材を欠いていた一方で、中盤、とりわけ3MFのインサイドハーフに質の高いタレントが多かったことが大きな理由だろう。
しかしここに来て、その戦力バランスには変化が生じている。ジョルジーニョ、マルコ・ヴェッラッティが第一線を退き、その後釜となるべき「レジスタ」がまだ育っていないがゆえに、中盤が担うビルドアップとポゼッションの質がやや低下している一方で、前線には昨シーズンのセリエA得点王レテギ、フィオレンティーナに移籍して大ブレイクしたケーンと、シーズン20ゴール以上を叩き出すストライカーが台頭してきた。
しかも同じセンターフォワードながらプレースタイルが異なる両者は、2トップとして共存可能なだけでなく、むしろ近くにパートナーがいることでより持ち味が活きるタイプ。
人材豊富なMF陣をチームの中核に据え、その周りにチームを構築してきた従来のアプローチを見直し、この強力2トップを出発点としてチームを再構築する方がメリットは大きい。それ以前に2人のどちらかをベンチに置くのはあまりにもったいないと、ガットゥーゾ監督が考えたのは、ある意味では当然と言えるだろう。
エストニア戦で求められていたのは、勝点3は当然として、少しでも多くの得点を挙げて、首位ノルウェーとの得失点差を詰めることだった。W杯欧州予選は、グループ首位が本大会に直接エントリーできる一方、2位はプレーオフに回る仕組みで、勝点で並んだ場合には、直接対決の勝点よりも予選トータルの得失点差が優先されるレギュレーションになっている。
少なくとも11月16日に組まれている最終節でのノルウェーとの直接対決(ホーム)まで1位抜けの可能性を残すためには、残り試合に全勝したうえで、得失点差をできる限り積み上げるしかない。この直接対決で勝って勝点で並んだところで、得失点差で2位に留まる可能性が高いのは目に見えている(ノルウェーは9日のモルドバ戦に11-1で大勝し得失点差を+21まで積み上げた)にしてもだ。
ガットゥーゾ監督が、レテギとケーンの2トップに加え、中盤両サイドにマッテオ・ポリターノ、マッティア・ザッカーニという純粋なウイングを配した実質4-2-4の前がかりなシステムで臨んだ理由も、少しでも多くの得点を挙げることにあった。試合は狙い通り、イタリアが一方的に敵陣に押し込み、アタッキングサードでほとんどの時間を過ごす展開になった。
しかし、コンパクトな4-4-2のローブロックでゴール前を固めるエストニアに対してイタリアは攻め手を欠き、ブロックの周りをU字型にボールを回し、クロスを入れてははね返される煮え切らない展開のまま0-0で前半を終える。
左SBのフェデリコ・ディマルコが早いタイミングで高い位置に進出し、ザッカーニがやや内に絞ることで形成される3-2-5のポジショナルな配置から、位置的優位を活かして前進するビルドアップはそれなりに機能した。
だが、強力な1対1の突破力を武器にサイドやハーフスペースに局地的な数的優位を作り出せるタレントがまったくいないため、引いたローブロックを崩す手段に欠けるという、攻撃面における戦力的な限界が露呈した格好だった。
それでも後半は、体力と集中力が切れて守備網が緩んだ隙につけ込む形で5点を奪って大勝。58分に先制した後、69分、71分に立て続けにゴールを奪って3-0とした後も攻め手を緩めず、終了間際にさらに2点を追加したのは、2トップが常にゴール前で存在感を発揮して多くの決定機に絡んだのと並ぶ、ポジティブな材料だった。相手がFIFAランキング120位台のエストニアであるにしてもだ。
11月の予選最終節に組まれているノルウェーとの直接対決にグループ1位(=W杯出場権)の可能性を残すためには、勝点6の確保は絶対条件だった。それをクリアした点では、ポジティブなスタートには違いない。しかし試合そのものは、これまで見られなかった新たな可能性を感じさせる一方で、簡単には解決できそうにない大きな課題も垣間見える、手放しでは喜べない複雑な内容だった。
具体的に言えば、新たな可能性というのは、マテオ・レテギ、モイゼ・ケーンという2トップの呼吸が合った連携によるチャンスメイクと決定力の大幅な向上であり、大きな課題は、あまりにも不安定な最終ラインの守備である。歴史的に堅固な守備を自らの拠り所としてきたイタリアからすれば、その守備に小さくない不安を抱えるというのは皮肉な話ではある。
ベルガモで行なわれたエストニア戦のスタメンは以下の通り。
GK:ドンナルンマ
DF:ディ・ロレンツォ、バストーニ、カラフィオーリ、ディマルコ
MF:ポリターノ、バレッラ、トナーリ、ザッカーニ
FW:レテギ、ケーン
近年のイタリア代表は、EURO2020で優勝したロベルト・マンチーニ監督時代は4-3-3、ルチャーノ・スパレッティ前監督も当初はそれを受け継ぎ、昨秋に3バックにシステムを切り替えてからも前線は1トップ+トップ下の3-5-1-1と、ほぼ一貫して1トップを基本に据えてきた。これは、前線のストライカーに人材を欠いていた一方で、中盤、とりわけ3MFのインサイドハーフに質の高いタレントが多かったことが大きな理由だろう。
しかしここに来て、その戦力バランスには変化が生じている。ジョルジーニョ、マルコ・ヴェッラッティが第一線を退き、その後釜となるべき「レジスタ」がまだ育っていないがゆえに、中盤が担うビルドアップとポゼッションの質がやや低下している一方で、前線には昨シーズンのセリエA得点王レテギ、フィオレンティーナに移籍して大ブレイクしたケーンと、シーズン20ゴール以上を叩き出すストライカーが台頭してきた。
しかも同じセンターフォワードながらプレースタイルが異なる両者は、2トップとして共存可能なだけでなく、むしろ近くにパートナーがいることでより持ち味が活きるタイプ。
人材豊富なMF陣をチームの中核に据え、その周りにチームを構築してきた従来のアプローチを見直し、この強力2トップを出発点としてチームを再構築する方がメリットは大きい。それ以前に2人のどちらかをベンチに置くのはあまりにもったいないと、ガットゥーゾ監督が考えたのは、ある意味では当然と言えるだろう。
エストニア戦で求められていたのは、勝点3は当然として、少しでも多くの得点を挙げて、首位ノルウェーとの得失点差を詰めることだった。W杯欧州予選は、グループ首位が本大会に直接エントリーできる一方、2位はプレーオフに回る仕組みで、勝点で並んだ場合には、直接対決の勝点よりも予選トータルの得失点差が優先されるレギュレーションになっている。
少なくとも11月16日に組まれている最終節でのノルウェーとの直接対決(ホーム)まで1位抜けの可能性を残すためには、残り試合に全勝したうえで、得失点差をできる限り積み上げるしかない。この直接対決で勝って勝点で並んだところで、得失点差で2位に留まる可能性が高いのは目に見えている(ノルウェーは9日のモルドバ戦に11-1で大勝し得失点差を+21まで積み上げた)にしてもだ。
ガットゥーゾ監督が、レテギとケーンの2トップに加え、中盤両サイドにマッテオ・ポリターノ、マッティア・ザッカーニという純粋なウイングを配した実質4-2-4の前がかりなシステムで臨んだ理由も、少しでも多くの得点を挙げることにあった。試合は狙い通り、イタリアが一方的に敵陣に押し込み、アタッキングサードでほとんどの時間を過ごす展開になった。
しかし、コンパクトな4-4-2のローブロックでゴール前を固めるエストニアに対してイタリアは攻め手を欠き、ブロックの周りをU字型にボールを回し、クロスを入れてははね返される煮え切らない展開のまま0-0で前半を終える。
左SBのフェデリコ・ディマルコが早いタイミングで高い位置に進出し、ザッカーニがやや内に絞ることで形成される3-2-5のポジショナルな配置から、位置的優位を活かして前進するビルドアップはそれなりに機能した。
だが、強力な1対1の突破力を武器にサイドやハーフスペースに局地的な数的優位を作り出せるタレントがまったくいないため、引いたローブロックを崩す手段に欠けるという、攻撃面における戦力的な限界が露呈した格好だった。
それでも後半は、体力と集中力が切れて守備網が緩んだ隙につけ込む形で5点を奪って大勝。58分に先制した後、69分、71分に立て続けにゴールを奪って3-0とした後も攻め手を緩めず、終了間際にさらに2点を追加したのは、2トップが常にゴール前で存在感を発揮して多くの決定機に絡んだのと並ぶ、ポジティブな材料だった。相手がFIFAランキング120位台のエストニアであるにしてもだ。
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