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海外サッカー

セリエAトップ10のうち7チームが監督交代、注目はローマ新指揮官として「キャリア最後の挑戦」に臨むガスペリーニの手腕【現地発コラム】

片野道郎

2025.07.22

9シーズン指揮を執ったアタランタを離れ、ローマの新監督に就任したガスペリーニ。(C)Getty Images

9シーズン指揮を執ったアタランタを離れ、ローマの新監督に就任したガスペリーニ。(C)Getty Images

 トップ10のうち1位ナポリ、9位ボローニャ、10位コモを除く7チームが事実上の新体制と、昨シーズンに続いて「監督シャッフル」が止まらないセリエA。新監督を迎えて新たなプロジェクトを立ち上げた中でも、特に興味深いチームのひとつが、アタランタからジャン・ピエロ・ガスペリーニを新監督に迎えたローマだろう。

 昨シーズンは、ダニエレ・デ・ロッシ監督の早期解任をきっかけに迷走状態に陥り、14節時点には降格ゾーンから数ポイントの15位まで順位を落とす大不振に陥った。オーナーのフリードキン家が藁にもすがる思いで招聘した73歳の名伯楽クラウディオ・ラニエリが奇跡的なチーム再建に成功し、最終的にはチャンピオンズリーグ出場権(4位以内)まであと1ポイントの5位という近年最高の成績でシーズンを終えた。

 通常ならば、そのラニエリが引き続きチームの指揮を執って当然のように見えたかもしれない。しかしラニエリは、カリアリをセリエA残留に導いた2023-24シーズンを最後に監督引退を宣言しており、今回は「愛するローマを救うために」その引退を一時的に撤回して監督就任を引き受けた経緯があった。

 その際、1シーズンだけで監督の座を退く代わり、新シーズンからオーナーのシニアアドバイザーに就任し、ピッチ上にかかわる戦略を策定する合意も取り交わしていた。「私が続投しても新しいローマへの変革が1年遅れるだけ」と語ったそのラニエリが自らの後任として選んだのがガスペリーニだったというわけだ。

 ガスペリーニは1958年生まれ、今年67歳を迎えたベテラン監督である。20年を超える監督キャリアを通し、一貫してマンツーマン守備に基盤を置く独自の3-4-3システムを追求。異端と呼ばれながらもブレることなく信念を貫き、16年に就任したアタランタでその成果を大きく開花させた。

 就任1年目にセリエA4位と躍進すると、在任9シーズンで3位4回、4位2回、欧州カップ戦でもCL出場4回(最高位は19-20のベスト8)、EL出場4回(最高位は23-24の優勝)と、コンスタントにハイレベルな結果を残し、単なる「プロビンチャの優等生」だったアタランタを、ビッグ3(ユベントス、インテル、ミラン)に続く第2グループのトップに押し上げた。

 今やピッチ上の結果でもピッチ外の収益力でも、アタランタはローマ、ラツィオ、フィオレンティーナを上回り、ナポリと肩を並べるレベルにまで成長している。
 
 そのアタランタで、スクデットにどうしても手が届かない限界を感じていたガスペリーニが、おそらくキャリア最後となるであろう挑戦の舞台に選んだのがローマだった。オーナーのフリードキン家(本業はテキサス州に本拠を置く全米4位のトヨタディーラー)はこれまですでに10億ユーロ(約1726億円)をローマに投下し、さらに新スタジアム計画にも邁進している事実が示す通り、ビッグ3に対抗できるだけの資金力を持っている。

 近年のナポリが実現したように、ここからさらにもう一段階成長してビッグ3の間に割って入り、スクデットを現実的な目標に捉える可能性は十分にある、と判断したであろうことは想像に難くない。

 実際、6月17日に行なわれた就任記者会見で、ガスペリーニはこう語っている。

「ユベントスからも声をかけられたことは事実だ。しかし私は、私自身のキャリアにとって、自分のサッカーを表現し、チームとクラブに対して影響力を発揮できるという点において、このチームこそが最もふさわしい、進むべき道だと思った」

「ナポリが過去3年で2回スクデットを獲ったこと、パリが観光だけでなくサッカーの都になったことを見ても、そうした結果を出すことは他の都市でも可能なはずだ。ただしそのためには、建設的なやり方、正しいやり方で、すべての要素をひとつの方向に向ける必要がある」

「ローマではマスコミやサポーターのプレッシャーが強いという話は以前から耳にしてきたが、私が外部から見ていた限りでは、ローマという環境には非常に強い情熱、大きな目標を勝ち取ることへの強い欲望があると感じてきた。この強いエネルギーをひとつの方向に向け、最良のやり方で導いていくことができれば、ローマはより高い競争力を持つことができるはずだ」

【動画】ガスペリーニ体制初のプレシーズンマッチ、セリエDのトラステベレを相手にディバラらがゴールを決めて14-0で勝利
 
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