専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外サッカー

イタリア代表新監督ガットゥーゾは、「帰属意識」「結束」「ファミリー」を柱に「敵陣でボールを保持し、ゴールを奪うチーム」を目指す【現地発コラム】

片野道郎

2025.06.21

イタリア代表の新監督に就任したガットゥーゾ(中)。FIGCのグラビーナ会長(右)、代表の選手団長を務めるブッフォンとともに会見に出席した。(C)Getty Images

イタリア代表の新監督に就任したガットゥーゾ(中)。FIGCのグラビーナ会長(右)、代表の選手団長を務めるブッフォンとともに会見に出席した。(C)Getty Images

 6月19日、ルチャーノ・スパレッティの後任としてイタリア代表監督に選ばれたジェンナーロ・ガットゥーゾの就任記者会見が、ローマのホテル・パルコ・デイ・プリンチピで行なわれた。会見にはFIGC(イタリア・サッカー連盟)のガブリエレ・グラビーナ会長、そしてイタリア代表選手団長のジャンルイジ・ブッフォンが同席。3人が記者の質問に答える形が取られた。

 今回のイタリア代表監督交代に至る経緯は、過去記事「イタリア代表が大混乱…前日解任のスパレッティ監督がチームを指揮→後任決まらずW杯1年前に指揮官不在の異例事態【現地発コラム】」で、詳しくレポートした通り。

イタリアはワールドカップ予選初戦のノルウェー戦に0-3で完敗。グループ1位抜けに早くも黄信号が灯り、代表チームに批判が殺到したのを受けて、グラビーナ会長がスパレッティ監督の電撃解任に踏み切った。ところが、後任の第一候補だった前ローマ監督のクラウディオ・ラニエリに断られ、もうひとりの候補だったステーファノ・ピオーリもすでにフィオレンティーナと合意していたことで、監督選びは複雑な状況に陥っていた。

 そこで浮上してきたのがガットゥーゾ、そして4年前の2021年にイタリア代表を率いてEURO2020を制したロベルト・マンチーニという2人の名前だった。一部報道によると、主力選手を含む代表チームの一部がマンチーニの復帰を望んだことなどから、グラビーナ会長も一時はその方向に強く傾いたとされる。しかし、選手団長として内部で強い発言力を持つようになっていたブッフォンが、マンチーニの復帰に強く反対(辞任をちらつかせたとも伝えられる)したことで実現には至らず、最終的にそのブッフォンが強く推すガットゥーゾに決まったという経緯だったようだ。

 周知の通り、マンチーニはEURO優勝後の2022年3月、カタールW杯予選のプレーオフで北マケドニアに敗れて出場権を逃すと、続くEURO2024予選たけなわの2023年夏に突如辞任を表明。直後にサウジアラビア代表監督に転身した経緯がある(その後2024年10月に解任)。当時は、2500万ユーロ(約42億円)ともいわれる高額年俸に釣られたともいわれたが、いずれにしてもそれがイタリア代表に対する背信行為だったことは確か。最近のインタビューで「辞任は過ちだった。後悔している」とコメントするなど、復帰に意欲を見せていたが、代表最多キャップを持ち、アッズーリへの帰属意識が人一倍強いブッフォンからすれば、「裏切り者」を復帰させるのは筋が通らない、受け容れるわけにはいかない、ということだったのだろう。
 
 事実、この就任会見でガットゥーゾ選任の理由として前面に打ち出されたのも「アッズーリへの帰属意識」だった。グラビーナ会長は、会見の冒頭でこう語っている。

「我々はガットゥーゾを選んだ。代表は彼を必要としており、彼も選手として招集された時と変わらぬ熱意で即座に応えてくれた。最初に彼と話した時強く心を打たれたのは、『私』ではなく『我々』を優先する姿勢、そして誰も1人で勝つことはできない、ワールドカップには全員で行くのだ、という言葉だった。彼はアッズーリのシャツが持つ意味を深く知っており、この重責を引き受けることを怖れない。そしてグループの結束を第一に置くタイプの監督だ。彼の就任に重要な役割を果たしてくれたブッフォンに感謝したい」

 純粋に監督としての実績だけに焦点を当てれば、ガットゥーゾのそれが代表監督にふさわしい水準に達しているかどうかは、率直に言って微妙なところだ。セリエBやギリシャでの下積み時代を経て、ミラン、ナポリ、バレンシア、マルセイユ、ハイドゥク・スプリトを率いたが、在任期間は最長でも1年半。19-20シーズンにナポリで勝ち取ったコッパ・イタリアが唯一のタイトルだ。

 穿った見方をすれば、目に見える実績だけで十分な説得力を持たせるのが難しいがゆえに、それを補強する要素として「アッズーリへの帰属意識」というコンセプト/スローガンが持ち出された、という解釈もできる。コーチングスタッフに、レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリという元代表選手(コーチとしての実績は特にない)をあえて加えたのも、また、A代表と育成年代代表を結びつけるプロジェクトを立ち上げて、元代表監督のチェーザレ・プランデッリをトップに据え、スタッフとしてジャンルカ・ザンブロッタ、シモーネ・ペッロッタ(いずれも2006年W杯優勝メンバーだ)を加えたのも、その一環と言えるだろう。いわば、「元代表選手が強い帰属意識を発揮して、一丸となってアッズーリを支える」構図を演出し、その頂点にブッフォンとガットゥーゾを置いた格好だ。

 そのブッフォンはこう語っている。

「今回の選択は、会長やその他の関係者と意見が一致した結果だ。このレベルにおいては、監督の手腕の優劣に大きな差はない。むしろ、その時点におけるチームの状況に適した監督、機能する監督がいるということだ。いま我々が直面している状況において、リーノ(ガットゥーゾの愛称)を代表監督に据えるのが最良の選択だと考えている。その選択の是非は時間が教えてくれるだろう。その結果について責任を取る用意はある」

【動画】イタリア代表の新監督に就任したガットゥーゾの会見&舞台裏ムービー
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号

  • soccer_digest

    6月10日(火)発売!

    定価:800円 (税込)
  • world_soccer_digest

    2025年6月19日(木)発売!

    定価:980円 (税込)
  • smash

    6/20(金)発売!

    定価:800円 (税込)
  • dunkshot

    好評発売中!

    定価:1100円 (税込)
  • slugger

    5月23日(金)発売!

    定価:1100円 (税込)