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海外サッカー

アッレーグリ新体制のミランを深掘り「コンテのナポリから拝借したアイデア」「レオンと同じくらい重要な役割を担っているのが」【現地発コラム】

片野道郎

2025.08.01

リバプール戦でゴールを決めたミランのレオンが、両手で「20」のパフォーマンス。リバプールの背番号20で、ポルトガル代表の同僚だったジョッタを追悼した。(C)REUTERS/AFLO

リバプール戦でゴールを決めたミランのレオンが、両手で「20」のパフォーマンス。リバプールの背番号20で、ポルトガル代表の同僚だったジョッタを追悼した。(C)REUTERS/AFLO

 8位という屈辱的な成績で欧州カップ出場権すら得られずに終わった昨シーズンの深刻な混迷にピリオドを打つべく、ミランは12年ぶりにマッシミリアーノ・アッレーグリを呼び戻して再建に乗り出した。

 ミラネッロでの一次キャンプもそこそこに出発したアジアツアーで、アーセナル、リバプールというプレミアリーグの強豪2チームとほぼ互角に渡り合うポジティブなスタートを切ったことで、マスコミやサポーターの間では期待が盛り上がっている。

 チームが始動して半月あまりでのプレシーズンマッチだけに、結果を云々すること自体にあまり意味がない。とはいえ、この2試合の戦いぶりに新監督アッレーグリの刻印がしっかりと刻まれていたこと、そして欧州トップレベルの強豪を相手にチームとしての戦術メカニズムが十分に機能していたことは、注目に値する。

 今シーズンのミランは、事実上「ゼロからの再出発」を切ったと言っても過言ではない。

 足かけ5年に及んだステーファノ・ピオーリ体制にピリオドを打ち、ポルトガル人のパウロ・フォンセカを監督に迎えて、よりポゼッション志向の強い攻撃サッカーに舵を切ろうと試みたのが昨夏のこと。しかしフォンセカは一部選手との間に問題を抱えるなどで、プロジェクトを軌道に乗せることができず、12月に在任わずか5か月足らずで解任の憂き目に遭う。

 後任のセルジオ・コンセイソンも、就任直後のスーペルコッパでインテルを下してタイトルを勝ち取ったものの、セリエAではチャンピオンズリーグ出場権はもちろん、ヨーロッパリーグ出場権にすら手が届かない順位に留まったまま、過去10年で最低順位の8位でシーズンを終えた。

  これを受けたクラブ首脳陣は、2023年夏にパオロ・マルディーニTDを解任して以来、事実上空席だった強化責任者の座に、ラツィオで実績を残したイグリ・ターレを招聘。2010-11シーズンから4年間ミランを率い、就任1年目にスクデットをもたらしたアッレーグリ監督を呼び戻し、チームの全面的な再建を委ねた。

 ターレは、ティジャニ・ラインデルス(→マンチェスター・シティ)、テオ・エルナンデズ(→アル・ヒラル)の主力2人に加え、エメルソン・ロイヤル(→フラメンゴ)も売却。さらにダビデ・カラブリア、アレッサンドロ・フロレンツィ、ルカ・ヨビッチとの契約を満了、期待の星だった17歳のFWフランチェスコ・カマルダをレッチェにレンタルに出すなど、陣容の見直しを進めてきた。
 
 その一方で、サムエレ・リッチ(トリノ)、ペルビス・エストゥピニャン(ブライトン)を獲得し、レアル・マドリーとの契約を満了した39歳のルカ・モドリッチと、戦力以上に若いチームにとってのメンター的な役割を期待して1年契約(クラブ側に1年の延長オプションあり)を締結。さらに中盤や前線にも新戦力を獲得すべく動いている。

 7月20日からシンガポール、香港、さらにはオーストラリアのパースを点々とし、8月初めに一旦イタリアに戻った後、さらに8月9、10日にはダブリンとロンドンでリーズ、チェルシーと連戦。8月18日のコッパ・イタリアで公式戦デビューを迎える目まぐるしいカレンダーが組まれているプレシーズンは、開幕に向けた準備というよりも、CL出場権を逃したことによる収入減を少しでもカバーしたいピッチ外の財政上の要請に基づくものだ。

 トレーニング以上に移動時間が多い理不尽なハードスケジュールの中でも、しかしアッレーグリはチームに明確なアイデンティティーを植え付けつつある。アーセナル、リバプールとの2試合で見られたのは、攻守それぞれの局面で明らかに配置が異なる可変システムを採用した布陣だ。あえて基本となる配置を数字で表現するならば4-3-3ということになるだろう。メンバーは以下のような構成だった。

GK:メニャン(トッリアーニ)
DF:トモリ、チャウ、パブロビッチ、バルテサーギ
MF:ロフタス=チーク、リッチ、フォファナ(ムサ)
FW:サーレマーケルス、レオン、プリシック

 最大のポイントは、ラファエウ・レオンを左ウイングではなくセンターフォワード(CF)として起用したこと。圧倒的な攻撃のタレントを誇るにもかかわらず、パフォーマンスにムラがあるうえに守備での貢献がほとんど期待できない欠陥を逆手に取って、守備の負担を大幅に軽減すると同時に攻撃の最終局面に専念させる「いいとこ取り」をしようとする狙いである。

 この解決策自体は、ピオーリをはじめ過去にミランを率いた監督たちも、オプションとして試みてきたものだ。しかし、他のプレーヤーとの兼ね合いや攻守のバランス確保といったハードルもあって、基本システムとして継続的に用いるに耐えるレベルまで完成度が高まることはなかった。

【動画】ミランがアーセナル、リバプールとプレシーズンマッチ
 
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