Jリーグ・国内

ザーゴ新体制が抱えるリスクと可能性――伝統のスタイルにメスを入れた鹿島は、新戦術をどう消化するのか

小室功

2020.03.26

ザーゴ新監督を迎え入れ、新たな戦術の導入を図る鹿島。攻守における連動性を高めるべく、現在もトレーニングマッチを積極的にこなしている。写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 新型コロナウイルスの影響で、Jリーグやルヴァンカップなどの公式戦が中断されて、およそ5週間が経過する。なかなか収束のめどが立たず、"日常"を取り戻すにはもうしばらく時間がかかりそうだ。

 新監督にアントニオ・カルロス・ザーゴを迎え入れ、新たな戦術の導入を図っている鹿島アントラーズは、攻守における連動性を高めるべく、この時期にトレーニングマッチを積極的にこなした。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためにファンやサポーター、そしてメディアにも完全非公開。クラブの公式サイトを通じて選手たちのコメントが発信されているが、チーム作りの進捗状況を知る手がかりは少なかった。

 そんななか、3月21日にカシマスタジアムで行われた札幌とのトレーニングマッチがDAZNで配信された。新生・鹿島の輪郭に触れるよい機会となった。

 試合は45分×2本(その後、35分×2本)。公式戦さながらの激しいマッチアップがあちこちで繰り広げられた。無観客ということもあり、選手たちのエキサイトした声がスタジアム中によく響き渡っていた。
 
 チーム始動から約2か月半。ザーゴ監督が打ち出す新戦術は浸透しつつある。だが、完成度はまだまだ。プレーの良し悪しの揺れ幅が大きく、チームとしての安定感に欠ける面は否めない。「理想には程遠い」と、指揮官も口にしている。

 ザーゴ監督が掲げる理想とは何か。1月23日の新体制会見の席上で、こう所信表明していた。

「ボールをつないで、相手に何もさせない。ボールを奪われたら、すぐさまプレッシャーをかけて取り戻す。試合の主導権を握り、攻撃的で、華麗なサッカーをピッチ上で表現したい」

 ボールを握ることを"是"とするザーゴスタイルの生命線はビルドアップとトランジションにあるだろう。少々乱暴な言い方だが、この2点の質が上がっていけば、チームの骨子はほぼ完成だ。

 当面の課題はビルドアップにある。

 両SBのスタートポジションを高く設定し、2ボランチのひとりが最終ラインに下がり、両CBとともに3バックのような形を作るわけだが、GKを含めてのボールの動かし方に改善の余地が見受けられる。