Jリーグ・国内

鹿島、FC東京、それとも…本命不在のJ1レースを制するポイントは? 柏がリードするJ2上位戦線もチェック

加部究

2019.10.17

28節終了時点で、首位に立つ鹿島。混迷の度合いが深まったときの勝負強さがある。写真:徳原隆元

 28節で首位に立った鹿島が抜け出すか、それとも後続が差し切るか――。今季のJ1優勝争いは本命不在の混戦だ。またJ2では2位の座を巡るレースが熾烈を極めている。そんな両リーグの趨勢を、まずは俯瞰的に紹介していこう。

 開幕前は川崎時代到来の予感に満ちていた。

 昨年連覇を達成した王者は、ロンドン五輪得点王のレアンドロ・ダミアンを補強。新しい切り札がゼロックス・スーパーカップで決勝点をもたらし、エウシーニョが去り懸案の右SBも、フィットしないマギーニョに代わった馬渡和彰が及第点のプレーを披露。圧倒的な層の厚さを誇示しながら、シーズンインを迎えたかに見えた。

 ところが幕が開くと、思わぬ主役が躍り出た。開幕戦で前回覇者がホームの等々力に迎えたのはFC東京。効果的な補強が進まない様子だったが、既存の戦力が大きな驚きをもたらした。昨年までは劣勢でのジョーカーに過ぎなかった17歳の久保建英が、レンタル先の横浜から戻るとスタメンを奪取。川崎にゲームを支配され狭いスペースに追い込まれても、卓越したテクニックでボールを失わず、時間を作りカウンターの起点にもなった。スコアレスドローに終わった試合だが、久保の変貌ぶりには、抜擢したFC東京の長谷川健太監督自身が感嘆した。
 
「素晴らしい、のひと言。風下の前半も建英のところでタメが作れたので相手の嫌がる攻撃を仕掛けられた。子どもから大人のメンタルに変わり、守備でも穴を作らなかった。もう堂安(律)が欧州へ行く前のレベルくらいには来ている。U 20ワールドカップで活躍すれば欧州から声がかかるかもしれない」

 それからの久保は、試合を重ねる毎に目に見えて成長を遂げていった。動きに切れを増し、果敢さと冷静さのバランス、緩急を織り交ぜた駆け引きなどでも違いを見せるようになり、新しい牽引車を得たFC東京は開幕から12戦負けなしのスタートダッシュをかけた。ラグビーワールドカップ開催のために秋からアウェー8連戦を強いられるハンディを考えれば、タイトルを獲るには前半戦のリードが大前提になる。さらに18歳になれば久保が去っていく予感が十分にあったわけだから、長谷川監督もほぼメンバー固定で突っ走った。

 久保がプレーした14節までが10勝3分1敗で、移籍後が6勝2分6敗だからペースダウンは明白だ。また今年はホームが12勝3敗で、アウェーが4勝5分4敗。まだアウェー8連戦は折り返したばかりで、背中にピタリとつけていた鹿島、横浜が揃って分けた27節は再度引き離す絶好のチャンスだったが、松本に勝ち切れず歩調を合わせてしまう。堅守は不変でも、豊富な戦力の割に、流れを変え崩し切るための手札が定まらず、ついに28節に首位を譲った。