イラン代表がアクションを起こした国歌斉唱拒否に、対戦相手の英雄が賛辞を贈った。
現地21日、サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)グループステージB組の第1戦イングランド対イランは、イングランドが大量6ゴールを奪い幸先の良いスタートを切った。ところが試合前、"異様な光景"が起きていた。
【動画】合計8ゴールの乱打戦!W杯イングランドVSイランをチェック
キックオフ前の国歌斉唱。56年ぶりの世界一を狙うイングランド代表は1950年のブラジル大会以来、72年ぶりに『ゴッド・セーブ・ザ・キング』をW杯で歌った。一方、イラン代表が取った行動は、世界が注目するW杯の舞台では異例の出来事だった。
イラン国歌がスタジアムに流れる中、ピッチで肩を組んだ選手たちは誰一人歌っていない。イランサポーターは国歌が流れている間は叫んだりブーイングを続けたりする。そして、イラン国歌が終わると拍手が起きた。
スタンドの一部には「WOMAN, LIFE, FREEDOM(女性、命、自由)」と書かれたボードやポスター、イラン国旗などが多く掲げられた。イラン国営テレビは国歌斉唱の場面をカットし、それまで映っていたスタジアムのワイドショットに切り替えている。
この背景として、今年9月に髪を隠すスカーフの被り方が不適切だとしてイラン当局に拘束された22歳の女性が急死した。イラン国内では抗議デモが始まり、当局がデモ弾圧に動いている。このイラン政府の行動に反発した抗議活動が広がっており、国際大会などでイラン国歌を歌わないという形で抗議の意を示すアスリートが増加。バスケットボール、バレーボール、水球などでは試合で国歌を歌わないなど、スポーツ界も共闘している。これにサッカーの代表チームも同調したとされている。
このイラン代表の行動に、海外メディアも反応。米スポーツ専門局「ESPN」のサッカー専門ツイッターは、「イラン選手はイングランドとのW杯初戦を前に国歌を歌わないことを選んだ。母国で抗議する人たちへサポートを示すものと見られる」と口を閉じたイラン代表の画像を投稿した。
さらに英公共放送『BBC』の名物サッカー番組『Match of the Day』の司会者で、93年から94年までJリーグの名古屋グランパスでプレーした元イングランド代表FWガリー・リネカー氏は「力強く、とても重要なジェスチャーだった。サッカーを、その力を良い方向に使おうとしている」とイラン代表の姿勢を称賛した。
同代表のカルロス・ケイロス監督は2対6の敗北を喫した後、「イラン国内の政情不安がチームに大きな打撃を与えた」と英メディア『BBC Sports』に語っている。
ケイロス監督は、「このW杯に来て、彼らの責任ではないことをやれというのは間違っている。彼らは国民のために誇りと喜びをもたらしたいと思っている。この子たちがサッカー選手として自分を表現したいがために、ここ数日どんな生活を送っているのか、想像もつかないだろう」と国内の政情不安が代表チームに大きく影響を及ぼしていることを訴える。
加えて同氏は、「子供たちにゲームをさせるんだ。なぜなら、彼らが求めているのはサッカーの試合だからだ。彼らは、ここにいる他の代表チームと同じように国を代表し、国民を代表することを望んでいる」と切実な思いを吐露した。
イングランド代表ストライカーとして、1986年メキシコW杯で得点王に輝いた英雄からエールを贈られたイラン代表。次戦は現地時間25日、ウェールズ代表と対戦する。サッカー界最大の祭典で示したイラン代表の"無言"のアピール。彼らの行動の行方を、世界中のフットボールファンは固唾を飲んで見守っている。
構成●THE DIGEST編集部
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現地21日、サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)グループステージB組の第1戦イングランド対イランは、イングランドが大量6ゴールを奪い幸先の良いスタートを切った。ところが試合前、"異様な光景"が起きていた。
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キックオフ前の国歌斉唱。56年ぶりの世界一を狙うイングランド代表は1950年のブラジル大会以来、72年ぶりに『ゴッド・セーブ・ザ・キング』をW杯で歌った。一方、イラン代表が取った行動は、世界が注目するW杯の舞台では異例の出来事だった。
イラン国歌がスタジアムに流れる中、ピッチで肩を組んだ選手たちは誰一人歌っていない。イランサポーターは国歌が流れている間は叫んだりブーイングを続けたりする。そして、イラン国歌が終わると拍手が起きた。
スタンドの一部には「WOMAN, LIFE, FREEDOM(女性、命、自由)」と書かれたボードやポスター、イラン国旗などが多く掲げられた。イラン国営テレビは国歌斉唱の場面をカットし、それまで映っていたスタジアムのワイドショットに切り替えている。
この背景として、今年9月に髪を隠すスカーフの被り方が不適切だとしてイラン当局に拘束された22歳の女性が急死した。イラン国内では抗議デモが始まり、当局がデモ弾圧に動いている。このイラン政府の行動に反発した抗議活動が広がっており、国際大会などでイラン国歌を歌わないという形で抗議の意を示すアスリートが増加。バスケットボール、バレーボール、水球などでは試合で国歌を歌わないなど、スポーツ界も共闘している。これにサッカーの代表チームも同調したとされている。
このイラン代表の行動に、海外メディアも反応。米スポーツ専門局「ESPN」のサッカー専門ツイッターは、「イラン選手はイングランドとのW杯初戦を前に国歌を歌わないことを選んだ。母国で抗議する人たちへサポートを示すものと見られる」と口を閉じたイラン代表の画像を投稿した。
さらに英公共放送『BBC』の名物サッカー番組『Match of the Day』の司会者で、93年から94年までJリーグの名古屋グランパスでプレーした元イングランド代表FWガリー・リネカー氏は「力強く、とても重要なジェスチャーだった。サッカーを、その力を良い方向に使おうとしている」とイラン代表の姿勢を称賛した。
同代表のカルロス・ケイロス監督は2対6の敗北を喫した後、「イラン国内の政情不安がチームに大きな打撃を与えた」と英メディア『BBC Sports』に語っている。
ケイロス監督は、「このW杯に来て、彼らの責任ではないことをやれというのは間違っている。彼らは国民のために誇りと喜びをもたらしたいと思っている。この子たちがサッカー選手として自分を表現したいがために、ここ数日どんな生活を送っているのか、想像もつかないだろう」と国内の政情不安が代表チームに大きく影響を及ぼしていることを訴える。
加えて同氏は、「子供たちにゲームをさせるんだ。なぜなら、彼らが求めているのはサッカーの試合だからだ。彼らは、ここにいる他の代表チームと同じように国を代表し、国民を代表することを望んでいる」と切実な思いを吐露した。
イングランド代表ストライカーとして、1986年メキシコW杯で得点王に輝いた英雄からエールを贈られたイラン代表。次戦は現地時間25日、ウェールズ代表と対戦する。サッカー界最大の祭典で示したイラン代表の"無言"のアピール。彼らの行動の行方を、世界中のフットボールファンは固唾を飲んで見守っている。
構成●THE DIGEST編集部
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