「僕も人生でずっと欲しかったタイトルだった。見てくれ、本当に美しいだろう？」

　悲願のワールドカップ（W杯）戴冠を果たしたアルゼンチンの偉才、リオネル・メッシはそう語った。達成感に浸るような表情は「マラドーナ２世」と言われて2005年に代表デビューしてから担い続けてきた重責から解放されたように見えた。

　現地時間12月18日に行なわれたフランス代表とのカタールW杯決勝は、120分間で両軍が３点を奪い合って決着がつかず、PK戦にまでもつれる死闘だった。そのなかでアルゼンチンのナンバー10は異彩を放った。
  　23分に先制点となるPKを決めれば、２-２で迎えた延長前半109分には、自らが起点となった速攻から、最後はこぼれ球を泥臭くねじ込んで一時勝ち越しとなるゴラッソを決めた。PK戦でもメッシは対峙した名手ウーゴ・ロリスの完全に逆を突くキックを披露。重要な１番手としてチームに機運をもたらした。

　もっとも、36年ぶりの戴冠を果たしたアルゼンチンだが、決して楽々と勝ち上がったわけではない。大会初戦では、格下と見られていたサウジアラビアによもやの逆転負け。一気に窮地に立たされ、周囲からは「やはり勝てないのか」と逆風にさらされた。

　それでもチームが結束したのは、やはりメッシがいたからに他ならない。サウジアラビア戦後には、不安を煽らんとするメディアの前に自ら立ち、「この負けは痛い。言い訳はできない。だからこそ僕らはこれまで以上に団結しなければいけない。このグループは強い」と強調。その力強い言葉により若手も多かったチームはまとまった。