歴史的な大勝利を祝した“行進”は、多くの人々に歓喜をもたらすとともに、悲しみも届けてしまった。

　去る12月18日に行なわれたカタール・ワールドカップの決勝でフランス代表をPK戦の末に撃破し、36年ぶり３度目の世界王者となったアルゼンチン代表。彼らは19日（現地）に無事に帰国し、20日には首都ブエノスアイレスで盛大な優勝パレードを実施した。

　だが、これが小さくない混乱を招いた。優勝報告会の会場となる予定だった共和国広場は、400万人を超える人々が密集。あまりの混みようと危険性から選手たちを乗せた屋根のない2階建てバスは、引き返さざるを得なくなり、ヘリコプターでの移動を決断。しかし、目的地に建設されたアルゼンチンのシンボルであるオベリスク塔にはたどり着けなかった。
  　それほど多くのアルゼンチン国民が天才・リオネル・メッシを中心とした英雄たちの帰還に歓喜したと言える。だが、優勝パレードを見ようと街に終結した人々の一部は帰らぬ人となってしまったようだ。

　アルゼンチン紙『Ole』によれば、橋から選手たちを乗せたバスに飛び乗ろうとした20代の男性が、そのまま地面に落下。頭部を強打して病院に搬送されたが、死亡が確認されたという。また、日刊紙『La Nacion』は、ブエノスアイレスにあるサン・マルティン広場にある記念碑の一部が何者かによって破壊された際に、大理石の破片が５歳の少年に直撃。「頭部にダメージを負った少年は、昏睡状態に陥った」と伝えている。

　あまりにカオスな状況から機動隊も出動し、暴徒化したファンに催涙ガスなどで応戦する光景も繰り広げられたというアルゼンチンの優勝パレード。メッシが「早く帰りたいね。楽しみだよ」と語っていた場だったが、狂乱の場になってしまったようである。

構成●THE DIGEST編集部

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