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海外サッカー

周囲が「見え過ぎてしまう」三笘薫の凄み。プレミアで異彩を放つ25歳が語った課題「自分の判断で、自分の形を」【現地発】

松澤浩三

2023.02.17

今季に実質プレミアリーグでの1年目を過ごしている三笘。その図抜けたパフォーマンスは、現地メディアやファンを驚かせている。(C)Getty Images

今季に実質プレミアリーグでの1年目を過ごしている三笘。その図抜けたパフォーマンスは、現地メディアやファンを驚かせている。(C)Getty Images

 筆者がイングランドでプレミアリーグを中心にフットボールを見始めてから25年近く経過するが、日本人選手がリーグを席巻するような活躍を見せる時が訪れるとは、露程にも思わなかった。

 イングランド北西部で過ごした学生時代の1990年代終盤から2000年代初頭。カンファレンスナショナル(現在のナショナルリーグ、実質5部)のモアカムFCで日本人選手がプレーしているという情報を得た時があった。2001年に稲本潤一がアーセナル、川口能活がポーツマスに加入する前の話だ。

 選手の名前は、たしか「タカノ」だった。残念ながら当時は取材に行く機会がなく、その選手がその後に日本へ帰国したという話をモアカム出身のサッカー好きの友人に聞き、残念に感じたのを覚えている。

 もちろん、当時は日本人が刺身を食す文化に「生魚を食べるなんて信じられない」と言われる時代で、現在のように寿司がスーパーマーケットや駅の売店で購入などできなかった。筆者の住んでいた田舎町や寂れた地方都市では、日本産の醤油は中華食材店で数本並べられているのみで、味噌は取り寄せで2週間も待たなければいけなかった頃である。

 しかし、そんな時代でも「プレミアリーグで大活躍する日本人が出現する日が来るか? それとも、英国内で寿司やラーメンなどの日本食が大人気になるか?」と問われたら、迷わず、後者が流行ると予測したはずだ。いまブライトンで特大の輝きを放つ三笘薫の活躍はそれほど、予想だにしなかった出来事なのである。
 
 2012年の夏にマンチェスター・ユナイテッドに加入した香川真司は、アジア人で初となるプレミアリーグでのハットトリックを達成するなど少なからず爪痕は残したものの、真価を発揮しきれずに2シーズンで退団。香川と同じく12年夏にサウサンプトンへ移籍した吉田麻也も、デビューシーズンこそスタメンで活躍したが、その後の6シーズン半は最後まで不動のレギュラーにはなれなかった。

 あのミラクルレスターの一員として、2015-16シーズンの奇跡のリーグ優勝に貢献した岡崎慎司も1年目はレギュラーとして活躍したが、攻撃を牽引したジェイミー・ヴァーディーやリヤド・マハレズに比べれば、圧倒的な存在とは言い難かった。昨夏にモナコへと去った南野拓実もリバプールでカップ戦要員の域を超えなかった。

 翻って三笘は、実質的な活躍期間は3か月弱とはいえ、ブライトンで瞬く間に中心選手へと駆け上がっている。特筆すべきはシーガルズ(ブライトンの愛称)ファンだけではなく、現地の識者や記者、他クラブのサポーターも含めて、この国でサッカーを見ているほとんどの人間にその実力が認められている点である。

 取材をしていると、本人の口から頻繁に飛び出すのが、「チャンピオンズ・リーグ(CL)」という言葉である。すでに今夏の移籍先候補として「トップ6」と目されるプレミアリーグのあらゆる強豪クラブが挙げられているが、仮にブライトンがCLへの出場権を得られない場合には、「5000万ポンド以上の移籍金を置き土産に移籍する」というのが、英メディアを中心とした大方の予想である。

 ではなぜ三笘を世界最高峰のリーグに属するトップレベルのディフェンダーたちが止めることができないのか。単純に言えば、彼のサッカー選手としてのクオリティー以外の何物でもないのだが、この原稿の依頼を受け、筆者なりに考えてみた。
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