専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外サッカー

スペインとフランスの“決定的な違い”は「戦術的な攻略手段を持っていたかどうか」【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.07.13

先制点のアシスト以降、いい形でボールを持って仕掛けやフィニッシュに絡む場面がほとんど見られなかったエムバペ(中)。86分にチャンスを迎えるも、シュートは枠を捉えることができなかった。(C)Getty Images

先制点のアシスト以降、いい形でボールを持って仕掛けやフィニッシュに絡む場面がほとんど見られなかったエムバペ(中)。86分にチャンスを迎えるも、シュートは枠を捉えることができなかった。(C)Getty Images

 EURO2024準々決勝のスペイン対ドイツに続き、再び「事実上の決勝戦」と呼ばれた準決勝スペイン対フランスは、序盤に先制を許しながら21分、25分のゴールで逆転に成功したスペインが、残る1時間あまりを落ち着いてコントロールし、フランスに攻勢を許さずリードを守り切った。

【動画】EURO2024準決勝、スペイン対フランスのハイライト!

 客観的なデータから見れば、内容はほぼ互角と言っていい。シュート数はスペインの6に対してフランスは9(枠内シュートは2対3)。ゴール期待値はスペイン0.75に対してフランスは1.10とむしろ上回っている。

 スペインが作り出した決定機らしい決定機は、前半5分、ラミネ・ヤマルの右からのクロスにファーサイドで合わせたファビアン・ルイスのヘディングシュートのみ。フランスは受動的に守りながらも最後の一線は堅固だった。しかしスペインはヤマルとダニ・オルモが個のクオリティーを発揮して決めた難易度の高い2ゴールで勝負を決めた。

 他方フランスは、53分と63分にCKから、76分にはテオ・エルナンデズ、86分にはキリアン・エムバペがそれぞれエリア内の好位置から決定機を手にしている。このいずれかが決まっていれば、試合はまた違う展開、違う結末になっていたかもしれない。
 
 結果的に勝敗を分ける直接的な要因となったのは、両チームが前線に擁するタレントが違いを作り出したかどうかの差、ということになるのかもしれない。強豪同士の均衡した戦いにおいては、しばしば個のクオリティーが試合を決定づけるものだ。

 しかし総合的に見れば、立ち上がりの10分を除き、スペインが主導権を握って最後まで試合をコントロールし切った印象が強い。ボール支配率は58対42(前半は55:45、後半は60:40)と、試合を通してスペインが優勢だった。

 もちろん、ボール支配率と試合結果に直接的な関連性はない。しかしこの試合に話を限れば、スペインは自らの大きな強みである「ボール支配によるゲームコントロール」を前面に打ち出してフランスを封じ込めつつ、ヤマル、ダニ・オルモ、ニコ・ウィリアムスというタレントが個のクオリティーを発揮しやすい状況を作り出すことに成功している。

 一方のフランスは、上で見た4つの決定機(うち2つはセットプレー)を除くと、スペインのコンパクトな4ー4ー2を攻略することも、スペインのビルドアップとポゼッションをプレスによって分断して敵陣でボールを奪い、そこから速攻を仕掛けることもできなかった。エムバペ、ウスマンヌ・デンベレ、ランダル・コロ・ミュアニら攻撃陣のクオリティーを存分に引き出すためのお膳立てを用意できなかった、という言い方もできるだろう。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号