では、この両者の差はどこから生まれたのだろうか。それをひとことで言えば「組織的な戦術レベルの違い」ということになる。
フランスは、スペインのビルドアップに対してハイプレスを行なわず、自陣に4ー4ー1ー1のブロックを形成してミドルプレスを守備の基本に据えた。それに対してスペインは、ビルドアップ第1列の2CB(ナチョ、エメリック・ラポルト)と第2列中央のロドリという3人のユニットが、フランスのコロ・ミュアニとエヌゴロ・カンテの1ー1ユニットに対して常に数的優位を確保し、プレッシャーを受けることなく簡単にボールを敵陣に送り込む(あるいは運ぶ)ことができた。
さらにフランスは、左ウイングのエムバペが前線と中盤の間という中途半端な位置に立っており、その背後のハーフスペースは左インサイドハーフのアドリアン・ラビオがケアすることが多かった。そのため、そこにスペインの右ウイングのヤマルが下りてきたり、あるいは右SBヘスス・ナバスが進出すると、局地的な数的不利や位置的不利が生まれることになる。
実際、スペインの2得点はいずれも、右CBナチョがフランスのプレスラインを割る縦パスをこの右のハーフスペースに送り込み、そこでフリーでパスを受けたダニ・オルモとヤマルが絡んで仕掛ける、同じ形から生まれている。フランスの守備戦術をシステマチックに攻略する戦術的な手段、組織的なメカニズムをスペインは持っていたと言っていいだろう。
こうして最初の25分で逆転に成功したスペインは、数的優位を活かしてフリーマンを作り出し前進する戦術メカニズムを、今度はボールを保持して主導権を握り、試合のリズムをコントロールするために使った。フランスは、スペインのポゼッションを分断してボールを奪回する戦術的な手段(マンツーマンのハイプレス、狙ったボール奪取ゾーンに誘導する連動したプレスなど)を持たず、受動的にスペインの攻撃を受け止めるだけだった。
スペインからなかなかボールを奪えないフランスは、ボールを持ってもスペインのよく組織された4ー4ー2ブロックを崩す術を持たなかった。ディディエ・デシャン監督がこの試合、攻撃のオーガナイザーとして機能するアントワーヌ・グリーズマンをスタメンから外し、中盤をカンテ、オーレリアン・チュアメニ、ラビオという強靭なフィジカルと高い守備力を備えた3人で固めたのは、攻撃よりもまず失点のリスクを抑えることに優先順位を置いたためだろう。
前線にはたったひとつのプレーで決定的な違いを作り出すクオリティーを備えたエムバペ、さらにはデンベレ、コロ・ミュアニと、いずれもパリ・サンジェルマンでプレーする強力なアタッカートリオを擁している。チームとしてのリソースはまず失点しないことに費やし、攻撃は彼らの個人能力に委ねてもトータルの収支はプラスになるはず、というのが、デシャン監督の目論見だったはず。実際にこれまでもフランスは、そういうサッカーを貫いてロシア・ワールドカップ優勝をはじめとする結果を残してきた。
その意味でフランスが8分に決めた先制ゴールは、狙い通りではあった。立ち上がりからスペインに押し込まれる展開の中、初めて敵陣に進出してポゼッションを確立した流れから、左サイドでフリーになったエムバペがデンベレからのサイドチェンジを受け、ゴール前に詰めたコロ・ミュアニの頭にピンポイントで合わせるクロスを送り込む。最初に訪れたチャンスにワンプレーで違いを作り出したエムバペはさすがだった。
フランスは、スペインのビルドアップに対してハイプレスを行なわず、自陣に4ー4ー1ー1のブロックを形成してミドルプレスを守備の基本に据えた。それに対してスペインは、ビルドアップ第1列の2CB(ナチョ、エメリック・ラポルト)と第2列中央のロドリという3人のユニットが、フランスのコロ・ミュアニとエヌゴロ・カンテの1ー1ユニットに対して常に数的優位を確保し、プレッシャーを受けることなく簡単にボールを敵陣に送り込む(あるいは運ぶ)ことができた。
さらにフランスは、左ウイングのエムバペが前線と中盤の間という中途半端な位置に立っており、その背後のハーフスペースは左インサイドハーフのアドリアン・ラビオがケアすることが多かった。そのため、そこにスペインの右ウイングのヤマルが下りてきたり、あるいは右SBヘスス・ナバスが進出すると、局地的な数的不利や位置的不利が生まれることになる。
実際、スペインの2得点はいずれも、右CBナチョがフランスのプレスラインを割る縦パスをこの右のハーフスペースに送り込み、そこでフリーでパスを受けたダニ・オルモとヤマルが絡んで仕掛ける、同じ形から生まれている。フランスの守備戦術をシステマチックに攻略する戦術的な手段、組織的なメカニズムをスペインは持っていたと言っていいだろう。
こうして最初の25分で逆転に成功したスペインは、数的優位を活かしてフリーマンを作り出し前進する戦術メカニズムを、今度はボールを保持して主導権を握り、試合のリズムをコントロールするために使った。フランスは、スペインのポゼッションを分断してボールを奪回する戦術的な手段(マンツーマンのハイプレス、狙ったボール奪取ゾーンに誘導する連動したプレスなど)を持たず、受動的にスペインの攻撃を受け止めるだけだった。
スペインからなかなかボールを奪えないフランスは、ボールを持ってもスペインのよく組織された4ー4ー2ブロックを崩す術を持たなかった。ディディエ・デシャン監督がこの試合、攻撃のオーガナイザーとして機能するアントワーヌ・グリーズマンをスタメンから外し、中盤をカンテ、オーレリアン・チュアメニ、ラビオという強靭なフィジカルと高い守備力を備えた3人で固めたのは、攻撃よりもまず失点のリスクを抑えることに優先順位を置いたためだろう。
前線にはたったひとつのプレーで決定的な違いを作り出すクオリティーを備えたエムバペ、さらにはデンベレ、コロ・ミュアニと、いずれもパリ・サンジェルマンでプレーする強力なアタッカートリオを擁している。チームとしてのリソースはまず失点しないことに費やし、攻撃は彼らの個人能力に委ねてもトータルの収支はプラスになるはず、というのが、デシャン監督の目論見だったはず。実際にこれまでもフランスは、そういうサッカーを貫いてロシア・ワールドカップ優勝をはじめとする結果を残してきた。
その意味でフランスが8分に決めた先制ゴールは、狙い通りではあった。立ち上がりからスペインに押し込まれる展開の中、初めて敵陣に進出してポゼッションを確立した流れから、左サイドでフリーになったエムバペがデンベレからのサイドチェンジを受け、ゴール前に詰めたコロ・ミュアニの頭にピンポイントで合わせるクロスを送り込む。最初に訪れたチャンスにワンプレーで違いを作り出したエムバペはさすがだった。
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