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海外サッカー

スペインが“圧倒的な強さ”で頂点に立てた理由とは――「代表レベルでも、攻撃をタレント力だけに頼る“堅実路線”では不十分の時代が来た」【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.07.16

2ー1でイングランドを倒し、史上最多4度目のEURO優勝を果たしたスペイン。(C)Getty Images

2ー1でイングランドを倒し、史上最多4度目のEURO優勝を果たしたスペイン。(C)Getty Images

 前半こそ、両チームともに決定機らしい決定機がゼロという膠着した展開だったものの、後半立ち上がりに先制してからは、スペインがペースを握って試合をコントロール。イングランドも終盤にコール・パーマーのゴールで一矢報いたものの、最後には力の差を見せつけられた。スペインは直近5大会で3度目の優勝(通算4度目)。その中でも今回のタイトルは最も説得力に満ちたものだった。

【動画】EURO2024決勝、スペイン対イングランドのロングハイライト!

 イングランドは、前線からのプレスは放棄してスペインにボールを持たせつつも、中盤のキーマンで司令塔ロドリにフィル・フォデンをマンツーマンで貼り付ける対策でパスルートを制限し、ビルドアップとポゼッションの質を落とすことに成功した。

 スペインの2CBにボールを持たせる代わり、ハリー・ケインが縦パスのコースを切り、スペースに動きながらパスを引き出そうとするロドリをフォデンが封じることで、スペインはサイドを使うかロングボールを蹴るかという対応を強いられた。

 4ー4ー1ー1のブロックをミドルゾーンに敷くイングランドの守備戦術自体は、準決勝でスペインと当たったフランスも同じように採用していたが、ロドリへのマンマークというフランスにはなかったプラスアルファが効果を発揮した格好だった。
 
 タクティカルで動きの少ない展開のまま0ー0で前半が終了。しかし、スペインはほかでもないロドリが負傷のため、ハーフタイムに交代を強いられるアクシデントに見舞われた。ただ、この交代がもたらした戦術的な微調整が後半開始直後の先制点につながったのだから、サッカーはわからない。

 スペインのビルドアップは、第1列を2CB(ロビン・ル・ノルマン、エメリック・ラポルト)で形成し、第2列は中央にロドリ、開いた位置に左右SBがポジションを取る2+3(時には4+1)のユニットを基本としてきた。中央のゾーンでは、相手のプレス2枚に対して2CBとロドリが3対2の数的優位を作り出してプレスを回避し、ロドリを起点に前線にボールを送り込むという設計である。

 これが機能するのは、ロドリが絶妙なポジショニングで2CBとパスを交わすことで3人のうち誰かがフリーで前を向ける形を作り出すからだった。しかしそこが封じられたことで、前半はビルドアップとポゼッションの機能性が低下し、ほとんどチャンスが作り出せずに終わった。

 そのロドリを下げざるを得なくなった後半、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督は、ロドリとの交代で入ったマルティン・スビメンディに加え、前半はトップ下のダニ・オルモと並ぶ形で敵中盤ラインの背後にポジションを取っていたファビアン・ルイスも、1列下げてビルドアップに参加させた。これで2CBからのボールの出口はひとつ(ロドリ)から2つ(スビメンディとファビアン)になったわけだ。
 
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