専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外サッカー

スペインが“圧倒的な強さ”で頂点に立てた理由とは――「代表レベルでも、攻撃をタレント力だけに頼る“堅実路線”では不十分の時代が来た」【EURO2024コラム】

片野道郎

2024.07.16

 その形でスタートしたキックオフ直後のアクション、スペインは1分間にわたってボールを回した後、第1列の右寄りに流れてフリーになったファビアンを経由して、スペースのある右サイドに展開。縦パス2本で右WGラミネ・ヤマルが前を向いて仕掛ける形を作り出した。

 ヤマルがドリブルで中央に持ち込むのに合わせて、ダニ・オルモとアルバロ・モラタが裏のスペースをアタックし、イングランドの最終ライン4人全員を中央に引きつける。その時点で大外からフリーで走り込んできたニコ・ウィリアムスは完全にフリー。ヤマルからのラストパスを落ち着いてファーポスト際に流し込んだのだった。

 後半開始直後で、スペインの配置変更に対してイングランドが対策を打つ前のタイミングで決まったこの先制ゴールが、試合の大きな流れを決定づけることになった。イングランドはこの後、フォデンに加えてコビー・メイヌーも前に出し、スビメンディとファビアンを2人で見る修正によって、改めてスペインのビルドアップを制約するようになる。

 しかし、それによってイングランドの重心が上がって中盤が薄くなり、陣形も間延びしがちになったことで、スペインはロングボールも適宜交えながら、中盤に1人残ったデクラン・ライスの左右のスペースを使って攻勢に出る場面を作り始めた。48分にダニ・オルモ、55分から56分にかけてモラタ、N・ウィリアムス、66分にヤマルがシュートを放った場面がその典型だ。
 
 試合の流れは完全にスペインに傾くかに見えたが、73分、イングランドが数少ないチャンスを活かして同点に追いつく。スペインが中盤でのボール奪取からカウンターアタックで攻め込み、直前にモラタと交代で入ったミケル・オジャルサバルがシュートを放った直後、それをキャッチしたGKジョーダン・ピックフォードの素早いフィードから、今度はイングランドがカウンターアタック。

 前がかりになったスペイン守備陣が十分に戻り切る前に、ジュード・ベリンガムの落としを受けたパーマー(こちらも直前にメイヌーと交代で入ったばかり)が狙いすましたグラウンダーのミドルシュートをゴール左隅に送り込んだ。

 1ー1になってからのラスト20分は、両チームとも疲労で陣形が間延びしがちになったこともあり、それまでと比べればオープンな攻防になった。そうなると優勢なのはやはり、個のクオリティーで上回るスペインだ。82分に中盤で奪ってのカウンターからヤマルが迎えた決定的なチャンスこそ、ピックフォードのビッグセーブに阻まれたが、86分には決勝点となる2ー1のゴールを決める。
 
 自陣からのリスタートで、大きく間延びした中央のスペースを使い縦パス3本で前線までボールを届けると、DFを背負ってそれを受けたオジャルサバルがダイレクトで左にはたきそのままゴール前にスプリント。それを受けたマルク・ククレジャがDFラインとGKの間に折り返した速いロークロスにスライディングで合わせてゴールネットを揺らした。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号