イングランドも90分にCKから3本連続でヘディングシュートを放つ決定機を作り出したものの、1本目はGKウナイ・シモンに、2本目はゴールライン上に立っていたダニ・オルモに弾き返され、3本目は枠を外れて万事休す。
イングランドは、スペインの攻撃をある程度まで食い止めることには成功したものの、そのためにチームとしての振る舞いが消極的、受動的にならざるをえず、フォデンという重要な攻撃の駒にも守備での犠牲を強いるなどで、スペインの整った守備を攻略できるだけのリソースが攻撃に残っていなかった。
ケインが故障明けで本調子からほど遠く、ベリンガム、フォデン、ブカヨ・サカ(+パーマー、オリー・ワトキンス)の個人能力による単発のチャンスに頼る以外に攻め手を欠く状態では、スペインに太刀打ちするには明らかに不十分だった。
イングランドのガレス・サウスゲイト監督は試合後、「十分にボールを保持することができなかった。スペインはプレッシングが強力で、それをかわしてボールを持ち出す必要があったが、我々にはそれができなかった」と語っている。ボール支配率は前半が69対31、トータルでも63対37。スペインに与えたチャンスの半分は、中盤でのボールロストから喫したカウンターによるものだった。
大会を通して見れば、リスク回避一辺倒の受動的なリアクションサッカーに終始した最初の4試合と比べて、準々決勝のスイス戦以降の3試合はチームとしての振る舞いにいささか能動性と積極性が加わり、尻上がりに良くなった感はあった。しかし、サウスゲイト監督自身が語る通り、スペインと互角に渡り合うには十分ではなかった。
そのスペインは、グループステージでクロアチアとイタリアを一蹴し、ノックアウトステージに入ってからもドイツ、フランス、イングランドと強豪国を軒並み倒して7戦7勝。しかも、いずれの試合も結果はもちろん、内容でも完全に相手を上回っての栄冠だった。ここまで圧倒的な強さを見せつけた文句なしの優勝は、近年のビッグトーナメントでは記憶にない。
個のクオリティーの高さでは、イングランドやフランス、ドイツやポルトガルもスペインに引けを取っていたわけではない。違いを作り出したのは、何よりもチームとしての戦術的な完成度の高さだった。もはや代表レベルでも、失点回避に優先順位を置いて攻撃をタレント力だけに頼るような“堅実路線”ではまったく不十分な時代が来たということなのかもしれない。
文●片野道郎
【関連記事】オランダ戦でイングランドのサウスゲイト監督が得た大きな成功体験とは? 決勝の見どころは「哲学、スタイルが明確なスペイン相手に、どう振る舞うか」【EURO2024コラム】
イングランドは、スペインの攻撃をある程度まで食い止めることには成功したものの、そのためにチームとしての振る舞いが消極的、受動的にならざるをえず、フォデンという重要な攻撃の駒にも守備での犠牲を強いるなどで、スペインの整った守備を攻略できるだけのリソースが攻撃に残っていなかった。
ケインが故障明けで本調子からほど遠く、ベリンガム、フォデン、ブカヨ・サカ(+パーマー、オリー・ワトキンス)の個人能力による単発のチャンスに頼る以外に攻め手を欠く状態では、スペインに太刀打ちするには明らかに不十分だった。
イングランドのガレス・サウスゲイト監督は試合後、「十分にボールを保持することができなかった。スペインはプレッシングが強力で、それをかわしてボールを持ち出す必要があったが、我々にはそれができなかった」と語っている。ボール支配率は前半が69対31、トータルでも63対37。スペインに与えたチャンスの半分は、中盤でのボールロストから喫したカウンターによるものだった。
大会を通して見れば、リスク回避一辺倒の受動的なリアクションサッカーに終始した最初の4試合と比べて、準々決勝のスイス戦以降の3試合はチームとしての振る舞いにいささか能動性と積極性が加わり、尻上がりに良くなった感はあった。しかし、サウスゲイト監督自身が語る通り、スペインと互角に渡り合うには十分ではなかった。
そのスペインは、グループステージでクロアチアとイタリアを一蹴し、ノックアウトステージに入ってからもドイツ、フランス、イングランドと強豪国を軒並み倒して7戦7勝。しかも、いずれの試合も結果はもちろん、内容でも完全に相手を上回っての栄冠だった。ここまで圧倒的な強さを見せつけた文句なしの優勝は、近年のビッグトーナメントでは記憶にない。
個のクオリティーの高さでは、イングランドやフランス、ドイツやポルトガルもスペインに引けを取っていたわけではない。違いを作り出したのは、何よりもチームとしての戦術的な完成度の高さだった。もはや代表レベルでも、失点回避に優先順位を置いて攻撃をタレント力だけに頼るような“堅実路線”ではまったく不十分な時代が来たということなのかもしれない。
文●片野道郎
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